セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専13:

ソラフェニブ投与中に消化管の潰瘍性病変を発症した進行肝細胞癌の3例

演者 野田 香菜(熊本大学大学院 消化器内科学)
共同演者 柚留木 秀人(熊本大学大学院 消化器内科学), 徳永 尭之(熊本大学大学院 消化器内科学), 吉丸 洋子(熊本大学大学院 消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大学大学院 消化器内科学), 福林 光太郎(熊本大学大学院 消化器内科学), 永濱 裕康(熊本大学大学院 消化器内科学), 田中 基彦(熊本大学大学院 消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大学大学院 消化器内科学)
抄録 ソラフェニブは有害事象として手足皮膚症候群の他、血管内皮増殖因子の阻害により出血、穿孔を起こすことが知られているが、消化管の潰瘍性病変によるものは稀と言われている。ソラフェニブ投与中に、消化管の潰瘍性病変を発症した3症例を報告する。症例1は、58歳の男性で腹膜播種、骨転移を伴う進行肝細胞癌stageIVBに対しソラフェニブ800mg/日の投与を開始した。51日目に黒色便が出現したため、上部消化管内視鏡を施行し十二指腸潰瘍(A1 stage)を認め同部からの出血と診断した。NSAIDs内服歴はなくソラフェニブとの関連が疑われたため、一旦休薬し保存的加療を行ったところ潰瘍は改善しソラフェニブは200mg/日へ減量して再開した。その後消化管出血は認めなかったが、画像上病勢進行のため投与92日目でソラフェニブは中断した。症例2は、58歳の男性で多発肺転移と門脈浸潤を伴う進行肝細胞癌stageIVBに対しソラフェニブ400mg/日の投与を開始したが、9日目に黒色便を認めた。上部消化管内視鏡にて多発胃潰瘍(A1 stage)と診断した。癌性疼痛に対しNSAIDsを内服中ではあったがPPIを併用しており、ソラフェニブの関与が否定できず中断した。その後、経過中に食道静脈瘤破裂を認め内視鏡的治療を行ったが、治療後の食道潰瘍治癒が遷延し、ソラフェニブは再開せずに緩和治療の方針とした。症例3は、75歳の女性で、右腎浸潤、腹膜播種、門脈浸潤を伴う進行肝細胞癌stageIVBに対しソラフェニブ600mg/日の投与を開始し、15日目に手足皮膚症候群のために400mg/日に減量した。投与4ヶ月目に十二指腸潰瘍穿孔による穿孔性腹膜炎を発症し緊急手術となった。腹腔鏡下大網被覆術および洗浄ドレナージにて保存的に加療されたが、その後穿孔部からのリークと出血が持続し、術後19日目に死亡した。いずれの症例もソラフェニブに関連した潰瘍性病変の発症が疑われ、文献的考察を含めて報告する。
索引用語 ソラフェニブ, 消化性潰瘍