セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専08:

診断に難渋した肝原発多発カルチノイドの1例

演者 井戸 佑美(済生会熊本病院消化器病センター)
共同演者 齋藤 宏和(済生会熊本病院消化器病センター), 鈴木 博子(済生会熊本病院消化器病センター), 杉原 一明(済生会熊本病院消化器病センター), 藤山 俊一郎(済生会熊本病院消化器病センター), 須古 信一郎(済生会熊本病院消化器病センター), 門野 義弘(済生会熊本病院消化器病センター), 塩屋 公孝(済生会熊本病院消化器病センター), 上川 健太郎(済生会熊本病院消化器病センター), 工藤 康一(済生会熊本病院消化器病センター), 浦田 淳資(済生会熊本病院消化器病センター), 近澤  秀人(済生会熊本病院消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院消化器病センター), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院病理部), 多田 修治(済生会熊本病院消化器病センター)
抄録  症例は71歳の男性。2年前の検診では異常を指摘されていない。平成21年7月の検診の腹部エコー検査で肝内に多発する腫瘤を指摘され精査目的で10月受診となった。同時に便潜血陽性も指摘されていた。血液検査では明らかな異常所見は認めなかった。腹部エコー検査では背景は軽度脂肪肝で肝全体に多発する径5~25mm大の腫瘤性病変を認めた。胸腹部造影CT検査を行い、肝内の腫瘤の造影パターンは辺縁がリング状に濃染されるものから内部嚢胞状のものが認められ、転移性肝腫瘍が疑われた。その他原発巣を疑わせる病変は認めなかった。PET-CT・上下部消化管内視鏡検査・前立腺精査を行ったが原発巣となるような病変は認められなかった。診断確定のために初診から1カ月後に経皮的肝生検を行い、adenocarcinomaの診断となった。小腸精査を追加したが明らかな異常所見はなかった。初診から2ヶ月後に再度全身造影CT検査を行ったが、やはり原発巣の特定には至らなかった。また、肝腫瘍に明らかな増大傾向もなかった。肝腫瘍生検の病理組織検査を再検討し、免疫染色を行ったところシナプトフィジン陽性・クロモグラニンA陰性であったためカルチノイドの診断となった。それまでの全身精査で肝外に明らかな原発巣は特定されず、肝原発の多発カルチノイドの診断となった。初診から3ヶ月後に他院紹介となり肝両葉多発病変であることから肝動注化学塞栓療法の方針となった。紹介先で平成22年1月・2月に肝動注化学塞栓療法が施行され、その後の画像評価でPDの判定となった。5月よりソマトスタチンアナログ療法を開始したが、その後も肝腫瘤の増大傾向を認めた。食欲低下の進行があり平成23年2月よりソマトスタチンアナログ療法を中止し経過観察中である。カルチノイド腫瘤はその75%が消化管に発生し、肝原発は非常にまれでカルチノイド腫瘍全体の0.17%とする報告もある。今回我々は、診断に難渋し、施行しえた全身検索で原発巣を認めず、肝原発多発カルチノイドと診断した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝カルチノイド, 多発