セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研34:

肺気腫を合併した進行膵癌に対してGemcitabine投与中に、急速に肺障害が増悪した1例

演者 野中 彩沙(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター)
共同演者 河邉 顕(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 高岡 雄大(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 中村 吏(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 山崎 章裕(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 国府島 庸之(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 吉本 剛志(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 福嶋 伸良(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 森 大介(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 柿ヶ尾 佳奈(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 岡本 梨沙(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 福田 慎一郎(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 原口 和大(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 水谷 孝弘(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 福泉 公仁隆(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 原田 直彦(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 中牟田 誠(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター)
抄録 膵癌の化学療法において、Gemcitabine(GEM)はkey drugのひとつであるが、有害事象として肺毒性が認められることがある。今回、我々は肺気腫を合併した進行膵癌に対してGEM投与中に、肺障害が急速に増悪した1例を経験したので報告する。症例は74歳、女性。喫煙歴は30本/日を47年間。既往歴は68歳時に肺気腫と診断されていた。食欲不振を主訴に当科受診。画像検査にて腹膜播種を伴う手術不能進行膵尾部癌と診断した。さらに両肺野にびまん性の気腫性変化とブラを認め肺気腫の所見であった。膵癌に対しGEM(1200mg/body)の投与を開始した。GEMを計5回投与後より、全身倦怠感、労作時息切れが増悪した。血液検査で炎症反応の上昇、胸部X線にて両肺野の間質陰影の増強を認めた。胸部CTで気腫性嚢胞壁の肥厚を認めた。GEMによる薬剤性肺障害の疑いで当科入院となった。GEMを中止し、Prednisolone(PSL)40mg/日を開始した。しかし、PSL投与後も、画像上、両肺野の間質陰影は明らかな改善傾向を認めなかった。膵癌の肺転移、癌性リンパ管症の鑑別が必要であったが確定診断には至らなかった。PSLを漸減するとともに、全身倦怠感、呼吸困難感が強くなり、炎症反応、KL-6も上昇傾向にあった。PSL中止後に呼吸困難、PaO2の低下、PaCO2の貯留を認めたため、PSLを再開した。再開後、呼吸状態、炎症反応ともに軽快したため、PSLの維持療法を継続した。膵癌に対する治療は、肺障害の増悪とともにPSの低下を認め、化学療法の継続は困難と判断し緩和ケアに移行した。本症例は基礎疾患に肺気腫が合併しており、化学療法により肺の気腫性嚢胞壁の炎症・浮腫が高度となった結果、肺障害の急速な進行をきたしたと考えられた。原因としてGEMの薬剤性肺障害の関与が強く示唆された。基礎疾患に重度の慢性閉塞性肺疾患を合併する症例へのGEMの投与は、肺病変の不可逆性増悪をきたす可能性があり、注意を必要とする。
索引用語 膵癌, 薬剤性肺障害