抄録 |
症例は75歳、女性。主訴はなし。65歳時に右腎細胞癌の診断で、根治的腎摘出術を施行された。術後は年1回のCTでフォローされ、再発無く経過していた。75歳時のCTで膵臓に腫瘤を指摘され当科紹介受診となった。血液検査所見は腎摘後のため、Cre 1.21mg/dlと上昇を認めた。CEA、CA19-9の上昇は認めなかった。腹部超音波検査では、膵体部に境界明瞭な32×30mm大の腫瘤を認め、内部は比較的均一であった。造影CTでは、動脈相で辺縁が染まり、後期相でも造影効果が持続しており、hypervascular tumorのパターンを呈していた。MRIではT2強調画像で低信号を呈する腫瘤であった。また、PET-CTではごく軽度のFDGの集積を認めたが、他の膵実質との集積の程度は変わらず、有意な所見ではなかった。以上の画像所見より、腎細胞癌膵転移を疑い開腹手術を施行した。開腹すると膵体部に3cm大の膨張性発育を示す腫瘤を認め、周囲組織への浸潤も認めず、腎細胞癌の転移と考え膵中央切除を施行した。病理所見では、出血壊死を混じて異型細胞の充実性増殖を認め、異型細胞は淡明な細胞質と不整形でやや小型の核を有しており、腎細胞癌の膵転移として矛盾のない所見であった。 腎細胞癌の膵転移は比較的稀であり、術後10年以上経過して再発する症例も少なくない。転移病変の切除により長期予後も期待できることも多く、今回はさらに膵機能の温存も考え縮小手術を施行することができた。 今回我々は、比較的稀な腎細胞癌膵転移を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 |