セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専05:

成人間生体肝移植術後の早期合併症により再開腹に至った症例の検討

演者 吉屋 匠平(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
共同演者 調 憲(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 武冨 紹信(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 吉住 朋晴(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 池上 徹(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 萱島 寛人(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 森田 和豊(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 戸島 剛男(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 本村 貴志(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 間野 洋平(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 的野 る美(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 武藤 純(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
抄録 【背景】慢性肝疾患に対する最終的な治療手段である生体肝移植術後の早期再開腹の頻度はいまだ高率である。術後早期再開腹により外科的合併症の回復が見込める一方、手術自体が過大な侵襲となりうる。
【目的】生体肝移植術における早期再開腹の危険因子とその後の予後を明らかにする。
【対象】当科における慢性肝疾患に対する成人間生体肝移植術284例を対象とした(1996年10月~2011年3月)。
【方法】検討1:再開腹群(n=26)、非再開腹群(n=258)にて再開腹の危険因子および予後、検討2:再開腹群におけるグラフトロスの因子をそれぞれ術者側因子も含め解析した。
【結果】再開腹率は9.2%であった。検討1: (1)術式;全26症例中、止血術(n=10)、グラフト門脈血流の改善を目的としたシャント結紮(n=4)、脾臓摘出術(n=1)、胆汁漏ドレナージ(n=2)、腹腔内膿瘍、腹膜炎などを含むその他(n=9)であった。(2)危険因子;レシピエント年齢<55歳(p<0.05)、ドナー年齢>30歳(p<0.05)、移植後門脈血流量≦1.0L/min(p<0.05)、胆管空腸吻合(p<0.01)であった。多変量解析では門脈血流量のみが有意であった(p<0.05)。術者は有意な因子でなかった。(3)術式別危険因子;止血術では有意なものはなかった。径1cm以上のシャントを離断しなかった31例中5例(16%)は再開腹によるシャント離断を要したのに対し、1cm以上のシャントのない症例では再開腹例はなかった(p<0.05)。止血後のグラフト生存率に差はなかったが、シャント結紮例のグラフト生存率は再開腹群で有意に低かった(p<0.01)。検討2: 再開腹群におけるグラフトロスの危険因子はMELD score>20(p<0.05)、初回手術出血量>15L(p<0.05)であった。
【まとめ】1cm以上のシャント遺残は、術後早期再開腹の危険因子であり、可及的に離断しておくべきである。高MELD症例、大量出血例の再開腹後の予後は不良であり初回手術に細心の注意を要する。
索引用語 生体肝移植, 術後合併症