セッション情報 | ワークショップ1「炎症性腸疾患の新しい治療戦略」 |
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タイトル | WS1-09:難治性潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの有用性 |
演者 | 藤田 浩(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学) |
共同演者 | 嵜山 敏男(鹿児島大学病院 光学医療診療部), 大井 秀久(今村病院 消化器内科), 牧野 智礼(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 田口 宏樹(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 佐々木 文郷(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 橋元 慎一(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学病院 光学医療診療部), 田ノ上 史郎(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 瀬戸山 仁(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 小野 陽平(今村病院 消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学) |
抄録 | 【目的】近年、難治性潰瘍性大腸炎に対する複数の新規治療法が登場した。経口タクロリムス(Tac)はステロイド減量と寛解導入への効果が期待される免疫調節薬であるが、潰瘍性大腸炎治療における位置づけは未だ明確ではない。今回Tac治療の適応を明らかにすることを目的に、Tacによる寛解導入治療を行った症例の臨床的特徴と治療効果について検討した。【対象と方法】鹿児島大学病院及び今村病院で、2009年10月以降Tacによる寛解導入療法を行った潰瘍性大腸炎15例(男女比8:7、平均発症年齢36.6±17.5歳、平均罹病期間7.9±8.1年、重症5例/中等症10例、全大腸炎型12例/左側大腸炎型3例)を対象とした。Tacは0.1mg/kg/dayで経口投与を開始し、トラフ値を週2回測定した。トラフ値は開始後2週間を10-15ng/ml、以後は5-10ng/mlとなるよう用量調節した。寛解導入に成功した症例は12週で投与終了し、治療効果を評価した。【結果】Tac導入理由はステロイド(PSL)抵抗例7例、PSL依存例5例、以下アザチオプリン抵抗例、シクロスポリン抵抗例、糖尿病の既往のためPSL投与回避目的がそれぞれ1例ずつであった。目標トラフ値到達に要した日数は平均6.4±1.9日で、2例を除いて8日後までに目標値に達した。2例は投与期間中1度も10ng/mlを上回ることはなかったが、いずれも寛解導入に成功した。1例のみTac投与開始後も炎症反応上昇・症状の増悪を認め、投与を中止し手術を選択した。残り14例は全て活動性の低下を認めたが、12週目まで寛解を維持できたのは11例であった。そのうち8例はPSL離脱可能で、残り3例もPSL減量効果を認めた。寛解を維持できなかった3例のうち、1例は一旦中止したPSLを再開し、2例はインフリキシマブ治療に切替えた。【結語】Tacによる寛解導入療法の成功率は約7割で、成功した全例でPSL減量効果を認めた。Tacは既存の治療に難渋する症例に対して手術を決断する前に、検討すべき有用な治療法の1つであると考えられた。 |
索引用語 | 難治性潰瘍性大腸炎, タクロリムス |