セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研10:

肝浸潤を契機に診断されたホジキンリンパ腫の1例

演者 冨田 哲也(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科)
共同演者 上野 新子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科)
抄録 【症例】 80歳台、男性。2010年6月より全身性の小丘疹と38度台の発熱を繰り返すようになった。7月に胆道系酵素上昇出現、9月初旬より症状増悪し紹介入院となった。胆嚢摘出術の既往があり、前医でERCPが施行されていたが胆道に異常所見は認めなかった。全身に掻痒を伴う小発赤丘疹多発していた。腹部は平坦で肝脾触知せず、圧痛も認なかった。表在リンパ節は触知しなかった。
 AST 28 IU/l、ALT 26 IU/lと正常であったが、ALP 823 IU/l、γGTP 166 IU/lと上昇していた。白血球は9100 /μlと上昇し好酸球が25%を占めていた。ANA 40倍、AMAは陰性であり、免疫グロブリンは正常であった。肝炎ウイルス関連マーカーは陰性であった。EBV関連マーカーはVCA IgG 抗体陽性であったが、VCA IgM抗体、 EBNA、EBV DNAは陰性であった。DLSTはアスピリン、オルメサルタン、ニフェジピン、メキシレチンの4剤に陽性であった。腹部CT、MRCPで肝胆膵に特記する所見を認めなかったが、大動脈周囲のリンパ節腫脹を認めた。sIL-2R 7840 U/mlと上昇していた。骨髄に異常細胞は認めなかった。入院時はCMVIgM抗体陰性、CMVIgG抗体陽性の既感染パターンであったが、経過中にCMV抗原を測定したところ陽性であったため、CMVの再活性化と判断した。
 皮膚生検組織は薬疹を疑わせる所見であった。肝生検組織よりホジキン細胞と共に封入体肝炎の所見を認めた。さらに腋窩リンパ節の腫脹が出現したため生検を施行、大型の核小体を有する大型異型細胞を多数認め、背景に小型から中型のリンパ球がびまん性に見られ、免疫染色を含めてホジキンリンパ腫と確定診断した。CMVに対してガンシクロビルを投与した後に化学療法を施行、胆道系酵素は正常化し経過は良好である。
【考察】 肝臓にもリンパ腫の細胞が浸潤しており、肝機能異常の原因と考えられたが、CMVの再活性化の関与も考えられた。また、ホジキンリンパ腫に伴う免疫異常が薬剤過敏性に関与した可能性が示唆された。ホジキンリンパ腫の肝浸潤はまれであり、また、多彩な病態を呈して、肝機能異常の鑑別診断を行う上で、大変示唆に富むので報告する。
索引用語 ホジキン病, 肝臓