セッション情報 シンポジウム2「慢性肝炎治療の現況」

タイトル S2-10:

原発性胆汁性肝硬変の病態に準拠した治療方針; 当科における後ろ向き解析

演者 小森 敦正(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター)
共同演者 中村 稔(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 釘山 有希(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 戸次 鎮宗(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 福島 正典(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 橋元 悟(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 大谷 正史(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), はい 成寛(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 佐伯 哲(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 長岡 進矢(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 阿比留 正剛(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 八橋 弘(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 伊東 正博(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター), 石橋 大海(国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター)
抄録 【背景】原発性胆汁性肝硬変 (PBC) の治療に際しては、肝内胆管障害のみならず、併存する肝細胞障害や自己免疫性肝炎 (AIH)の合併 (PBC-AIH overlap 症候群)を正確に評価した上で、Ursodeoxycholic acid (UDCA) を中心にして肝内壊死炎症反応を抑制する事が望ましい。【目的】PBCにおいて、1) AIHの合併および高度な肝細胞障害の併存は副腎皮質ステロイド(PSL)導入の根拠となりうるか、 さらには 2) UDCAにフィブラート製剤を併用することで治療反応性は向上するか、を明らかにする。【方法】1991年9月から2011年3月まで当科に入院歴のあるPBC患者155例の臨床経過、病理組織診断等の医療情報から、疾患活動性および治療反応性を後ろ向きに検討した。PBC-AIH overlap 症候群の診断は、a) Poupon 等による基準 (Hepatology, 2006)、もしくは b) Nakanuma 等によるPBC病期分類を組み入れた改変AIH国際診断基準簡易版 (Tanaka A et al, Hepatol Res, 2011)を用いた。AST/ALP;正常上限x1.5未満およびT-Bil;正常化を治療反応あり (Corpechot C et al, J Hepatol, in press)、さらにはAST/ALP/T-Bil正常化を生化学的寛解と判断した。【結果】全患者の11.0%にあたる17例 (同時発症12例, 異時発症5例)がPoupon 等によるPBC-AIH overlap 症候群と診断され、この内10例 (58.8%; 同時発症5例, 異時発症5例 )にはPSLの導入ならびに維持投与がなされた。1年以上治療を行った同16例中12例(75.0%)に、さらには同時発症群の33.3%はUDCA投与のみにて治療反応を得た。これに対し、改変AIH国際診断基準簡易版を用いて肝細胞障害度の評価を行った50例中16例 (32.0%)がAIH疑診以上合併と診断されたが、全例でPSLは投与されなかった。最終観察時まで半年以上フィブラート製剤を併用された26例中17例 (65.4%)で治療反応が、うち15例では生化学的寛解が得られた。【考察、結論】AIHの異時発症を除外できれば、肝細胞障害の高度なPBC症例においてもUDCAに対する治療反応を評価したうえで、その後の長期観察を行うことが望ましいと示唆された。
索引用語 PBC, UDCA