セッション情報 ワークショップ6「難治性肝胆膵疾患に対する治療」

タイトル WS6-17:

肝持続動注化学療法が奏効した胆管浸潤を伴う肝細胞癌の3例

演者 岩尾 正雄(大分医療センター 消化器内科)
共同演者 山下  勉(大分医療センター 消化器内科), 福地 聡士(大分医療センター 消化器内科), 新関 修(大分医療センター 消化器内科), 重松 利行(大分医療センター 消化器内科), 室 豊吉(大分医療センター 消化器内科), 本田 浩一(大分大学 消化器内科), 清家 正隆(大分大学 消化器内科)
抄録 【はじめに】肝持続動注化学療法は、肝細胞癌(HCC)に対する化学療法として長年施行されている治療法であるが、胆管浸潤を伴うHCCでの治療効果は良好とは言えない。今回、胆管浸潤に対して肝持続動注化学療法が奏効したHCCの3例を経験したので、若干の考察を加えて報告する。
【症例】
症例1:60歳・女性。背景肝は脂肪肝。平成21年7月、黄疸に対する精査加療目的で当科に入院。総胆管までの胆管浸潤を伴うHCCによる閉塞性黄疸と診断し左右胆管にステントを留置。外科的治療は困難と考えられ、肝持続動注化学療法を計5クール施行した。治療終了後のCTおよびERCPで肝内のHCCと総胆管内の腫瘍の消失を認めた。
症例2:64歳・男性。背景肝はC型慢性肝炎。平成20年8月に肝S8のHCCに対して当院にてRFA施行された。平成22年11月の造影CTで肝S5にHCCの再発を認め、平成23年1月に精査加療目的で当科入院。入院時の採血で総ビリルビンの高値を認め、CT・MRCPの所見からHCCの胆管浸潤による閉塞性黄疸と考えられた。左右胆管にステント留置を行い、減黄後に肝持続動注化学療法を計4クール施行。治療後のCT・ERCPでS5のHCCは縮小、胆管内の腫瘍はほぼ消失を認めた。
症例3:68歳・女性。背景肝は脂肪肝。平成21年9月に造影CTで肝S7に9cm大のHCCを認め、門脈右枝・胆管へ浸潤していた。10月にリザーバー留置後、肝持続動注化学療法を開始。施行中に閉塞性黄疸が認められたため、胆管ステントを留置して、減黄後に肝動注療法を再開して、計12クール施行した。治療後のCT・MRCPでは腫瘍の縮小が認められた。
【結論】上記症例の共通点として、HCCの胆管浸潤による閉塞性黄疸が出現後、早期に胆管ステント留置での減黄を図り、肝持続動注化学療法を開始出来ている点が挙げられる。胆管浸潤を伴うHCCでは、早期に減黄等を行い全身状態の改善を図り、化学療法を開始することで、良好な治療成績を得ることができると考えられた。
索引用語 肝細胞癌, 胆管浸潤