セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専10:

多発肝転移をきたした神経内分泌腫瘍に対し、生体肝移植を施行した1例

演者 原 貴信(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
共同演者 高槻 光寿(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 曽山 明彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 村岡 いづみ(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 山口 泉(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 田中 貴之(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 木下 綾華(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 大野 慎一郎(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 望月 響子(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 足立 智彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 伊藤 信一郎(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 山之内 孝彰(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 藤田 文彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 金高 賢悟(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 南 恵樹(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 黒木 保(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 安倍 邦子(長崎大学病院 病理部), 林 徳眞吉(長崎大学病院 病理部), 市川 辰樹(長崎大学病院 消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院 消化器内科), 江口 晋(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
抄録 症例は40代男性。健診時の腹部超音波検査で多発する肝腫瘍を指摘され、精査の結果多発肝転移を伴う直腸カルチノイド(chromogranin(-), synaptophysin(-), CD56(+), Ki-67 labeling index (<1%))と診断。原発巣は切除可能であるものの、肝転移巣は両葉に及んでおり切除不能であった。肝以外への遠隔転移を認めないこと、患者およびその家族に生体肝移植の意思があること、全身状態良好で耐術可能と考えられることから、十分なインフォームドコンセントの後に、自己負担により原発巣切除と生体肝移植を一期的に施行した。術中迅速病理組織学的検査で腹水洗浄細胞診が陰性であること、肝十二指腸間膜内リンパ節、下腸間膜根リンパ節に転移がないことを確認した。低位前方切除術(D3郭清, DSTでの一期的吻合)による原発巣切除に引き続き、配偶者をドナーとした生体部分肝移植術を施行した。術前評価でレシピエント標準肝容積に対するグラフト容積比47%が確保可能であった右葉グラフトを用いた。実際のグラフト重量は546 g、レシピエント標準肝容積に対するグラフト重量は44.4%であった。手術時間は合計16時間17分、出血量は1100 gであり、無輸血で終了した。術後8日目に急性拒絶に対してステロイドパルス療法を要したが、その他の合併症なく術後16日目に転院となった。現在術後14ケ月が経過し、無再発で生存中である。神経内分泌腫瘍の転移性肝腫瘍に対する肝移植は本邦では14例の報告を認めるのみであるが、UNOSデータベースを用いた海外の報告によると1988年から2008年までに150例の肝移植が施行されている。消化管原発で高分化、55歳未満、肝以外への転移がない、腫瘍が全肝の50%以下、Ki-67labeling index<5%などの条件を満たせば、近年ではその5年生存率は約90%との報告もあり、5項目中4項目を満たす自験例は良好な予後が期待される。神経内分泌腫瘍を原発とした切除不能の転移性肝腫瘍に対しては、肝移植が治療のオプションとして提示されるべきと考える。
索引用語 神経内分泌腫瘍, 肝移植