抄録 |
【症例】37歳、女性【主訴】全身倦怠感【現病歴】2011年3月中旬より嘔気が続いていた。3月22日黄疸と白色便に気付き、3月23日近医へ受診した。血液検査で肝機能異常を指摘され、3月25日当院へ紹介され、食欲不振があり、同日精査加療目的で入院した。急性肝炎、急性胆管炎などが疑われたが、アルコール性、薬剤性、ウィルス性肝炎は否定的であった。【入院時身体所見】全身倦怠感が強く、眼球結膜に黄疸を認め、右季肋部に圧痛を認めた。【入院時検査所見】TP 8.8 g/dl, T-Bil 6.93 mg/dl, AST 1361 IU/L, ALT 1411 IU/L, LDH 389 IU/L, ALP 477 IU/L, γ-GTP 137 IU/L, CRP 0.22 mg/dl, WBC 4100/μl, RBC 427x104/μl, PT 46%, IgG 3355 mg/dl, ANA x1280, AMA (-), HBs-Ag (-), HCV-Ab (-). 【入院後経過】検査所見よりautoimmune hepatitis (AIH)が疑われ、4月1日肝生検を施行し、同日steroid 60 mg/dayで治療を開始した。AST/ALTは1516/1411 IU/Lをpeakに下降し、T-Bilは一時16.64 mg/dlまで上昇、PTは24.5%まで低下し、肝性脳症が疑われた時期もあったが、その後は順調に回復し、steroidを20 mg/dayまで漸減、5月31日退院、9月8日現在7.5mgで外来フォロー中である。肝生検では著明なinterface hepatitisを呈し、広範な壊死を伴い、多数のplasma cellの浸潤を認め、fulminant AIHと診断された。【考察】AIHはasymptomaticな症例から本例の如くfulminantな症例まで幅広い症状を示し、人種間においても大きな差がある。Steroidや免疫抑制剤が奏効する症例が多く、稀にfulminant hepatitisを呈する症例も存在する。欧米ではsteroidに反応しない症例はliver transplantationの適応となる(Czaja AJ. Liver Transplantation 2007; 13: 953)。本邦では圧倒的なdonorの不足から薬物療法に頼るほかはない。本症例は幸いにsteroid大量療法が奏功し、軽快したが今後も永く治療を継続する必要がある。 |