| 抄録 |
【目的】進行肝細胞癌に対し分子標的治療薬の登場で治療選択枝が広がり、最新の治療アルゴリズムでも治療法が追記されるなど治療戦略の構図が変化した。今回アルゴリズムに基づくIVR治療の意義を検討した。【方法】2000年9月から2011年3月までの肝外病変のないChild-PughA/Bの進行肝細胞癌初回治療症例184例を、脈管浸潤のない個数1~3個で2cm超3cm以下(A群73例)、3cm超(B群69例)、4個以上(C群20例)、脈管浸潤あり(D群22例)の4群に分類し、4群間の生存率、各群での治療別生存率、IVR治療でのリピオドール懸濁種別生存率を比較し、IVR治療の予後影響因子を分析した。【成績】4群間の生存率比較ではA,B,C,D群の順に有意に良好であった。A群では切除-局所治療(以下略)間に有意差なく良好で以下塞栓、動注の順であった。B群では動注を除く各治療間に、C群では全各治療間に有意差がなかった。D群では生存中の局所例を除くと各治療間に有意差がなかった。IVR治療ではA-B群間の生存率に有意差なく良好であった。懸濁種別比較ではA群を除き有意差がなかった。IVR治療の因子分析ではA,B群から複数の肝予備能の指標が抽出されたがC,D群からは抽出されず、C群からは唯一前区域病変の有無が、D群からは尾状葉病変の有無他が抽出された。またいずれの群でも追加局所療法の有無は予後に影響しなかった。【結論】A群では切除や局所療法を第一に考慮すべきで、B群ではIVR治療の成績が良好かつ他治療とほぼ同等であり塞栓療法は十分考慮すべきである。C群ではIVR治療が切除との成績に差がなく肝予備能が予後に影響しない点から、前区域病変例以外は切除よりIVR治療を優先すべきと考える。D群でも各治療間で成績に差がなく切除例全例が死亡しており、尾状葉病変例以外は積極的に切除を勧める意義はないと考える。分子標的治療薬に関しては初回治療経験がないが、各治療成績に差がなく総合的に生存率が不良なC,D群に導入の意義があると思われる。 |