セッション情報 シンポジウム2「慢性肝炎治療の現況」

タイトル S2-08:

HBV慢性感染患者に対する核酸アナログの発癌抑制効果の検討

演者 河野 聡(北九州市立医療センター内科)
共同演者 重松 宏尚(北九州市立医療センター内科), 三木 幸一郎(北九州市立医療センター内科), 丸山 俊博(北九州市立医療センター内科), 野村 秀幸(新小倉病院肝臓病センター), 下田 慎治(九州大学病態修復内科(第一内科))
抄録 【目的】核酸アナログによる肝細胞癌(以下HCC)発癌の抑制効果はいまだ定まっていない(Thursz M et al.Gut 2011;60:1025-1026.)今回、当院の核酸アナログ投与症例を用いてHCC発癌抑制効果の検討を行った。【対象および方法】核酸アナログを1年以上投与した患者のうち、投与開始1年以内のHCC発癌・他の悪性腫瘍の合併・他の疾患にて免疫抑制治療中の患者を除外した56名で解析を行った。初回核酸アナログはLMV/ETV=35/21例であった。核酸アナログ開始時の各パラメータは、平均年齢46歳、男/女=33/23例、CH/LC=41/15例、Genotype A/B/C/不明=0/0/20/36例、HBe抗原陽性/陰性=24/32例、HBVDNA (logcopy/ml)5以上/5未満=51/5例、平均Alb=4.1 g/dl、平均ALT=148 IU/l、平均PT=84.0%、平均AFP=6.3ng/ml、平均観察期間=1657日(428-3633)であった。加藤らの提唱する、HBVパラメータ・ALT値・年齢・発癌リスクを用いたHBVキャリアのステージ分類を用いると(肝臓45巻11号581-588)、発癌リスクはVery low/Low/High/Very high=6/5/14/32例であった。解析はKaplan-Meier法およびlog-rank検定で行った。【結果】経過中に6例のHCC発癌を認めた。発癌は、核酸アナログ開始時HBVDNA≧5 logcopy/mlの集団や、HBVキャリアステージがHigh/Very Highの集団のみからみられた。これらの集団で核酸アナログ投与により24週以内にHBVDNA<4 logcopy/mlに抑制(initial virological response:IVR)できると発癌率の低下がみられた。特に、HBVキャリアステージHigh/Very highの集団ではIVR達成により有意に発癌率が低下した(P=0.0461)。【考察】HBVDNA≧5 logcopy/ml(Chen CJ et al. JAMA 2006;295:65-73)やHBVキャリアステージでHigh/Very Highの集団はHBV慢性感染患者の自然経過におけるHCC発癌高リスク群である。これらの患者集団は核酸アナログを開始したのちも依然として高リスク群であり続ける。しかしながら、IVRが達成できた集団では発癌率が低下することが期待される。
索引用語 B型肝炎, 核酸アナログ