セッション情報 ワークショップ1「炎症性腸疾患の新しい治療戦略」

タイトル WS1-13:

潰瘍性大腸炎に対するアドレノメデュリン持続静注療法

演者 芦塚 伸也(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野)
共同演者 三宮 一朗(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 中野 みち子(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 三木 吾郎(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 彦坂 ともみ(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 星子 新理(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 松本 英丈(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 中島 孝治(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 稲津 東彦(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野), 北村 和雄(宮崎大学内科学講座循環体液制御学分野)
抄録 【目的】
炎症性腸疾患(IBD)の治療として、ステロイド療法、免疫調節剤療法、生物学的製剤療法は高い効果を示すが、一方で重篤感染症合併などの危険性を有し、より安全な治療法の開発が必要とされる。アドレノメデュリン(AM)は強力な血管拡張作用を有する生理活性ペプチドであるが、心血管保護作用、血管新生作用や抗炎症作用、抗菌作用などを有する事が判明しており、炎症性腸疾患モデル動物に対して腸炎改善効果が複数報告されている。我々は新規治療法として、活動性潰瘍性大腸炎(UC)に対するAM持続静注療法の臨床試験を開始し、少数であるが結果を得たため報告する。
【方法】
[対象] 難治性UCで、免疫調整剤・生物学的製剤の使用(受容)が困難な症例。
[投与法] AM 1.5 pmol/kg/min、8時間/日、連続12-14日
[評価]DAI score
【成績】
[背景] 5症例、年齢62(37-68)歳、男性 3・女性 2、全大腸型 3・遠位型 2、基礎疾患(糖尿病 3 、陳旧性結核疑い 1 )、重症 2・中等症 3、ステロイド抵抗性 4 ・ステロイド依存性 3
[前治療、併用療法]PSL強力静注療法 4 、白血球除去療法 4 、CMV陽性・治療 4 、AZA 4
[AM療法(5症例 6回)] 回数:1回 4例、2回 1例、 投与期間:12日間 1例、14日間 5例
[DAI score] 入院時11.0±1.22 (9-12)、AM療法直前 7.7±2.5 (3-10)、AM投与2週後 4.0±2.1 (2-7)、12週後 1.5±1.0 (0-2) 、DAI 4point以上の改善:4(80%)
[内視鏡]5例中4例で内視鏡的改善が得られた。潰瘍底、潰瘍辺縁に再生上皮が認められ、粘膜血管拡張が認められた。浅い潰瘍部は網目状に瘢痕化し「蜘蛛の巣」様の外観を呈した。
[有害事象]AM投与中に軽度の血圧低下を認めたが、臨床上問題とならなかった。
【結論】UCに対するAM持続静注療法5例を報告した。AM療法はUC患者においても、動物実験モデルでの報告同様に大腸炎改善効果を示し、内視鏡上も良好な粘膜修復が観察された。AMは生理活性ペプチドであり比較的安全性が高く、炎症性腸疾患に対する新しい治療戦略として発展しうる可能性が考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, アドレノメデュリン