セッション情報 |
ワークショップ5「難治性消化管疾患の外科治療」
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タイトル |
WS5-02:クローン病に対する外科治療のタイミング―緊急手術症例の検討―
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演者 |
東 大二郎(福岡大学) |
共同演者 |
二見 喜太郎(福岡大学), 石橋 由紀子(福岡大学), 永川 祐二(福岡大学), 前川 隆文(福岡大学) |
抄録 |
【はじめに】難治性消化管疾患のひとつであるクローン病に対する内科的治療の進歩はめざましいが,根治的治療がない現在,外科治療は治療体系のなかでは欠かせないものである.内科的治療から外科的治療への移は時間的余裕をもって安全に移行するべきであるが,症状により緊急手術を行う場合がある.今回緊急手術に至った症例を検討し,手術のタイミングを考察した.【対象・方法】2009年12月までに当科において腸管病変に対して初回手術を行った307例を対象とした.このうち緊急手術例は22例で,経年的な頻度の変化,術前治療,手術理由について検討した.【結果】初回手術例307例を内科的治療法が変化した1999年以前(前期)の129例と,2000年以後(後期)の151例に分け,術前治療(栄養療法,アミノサリチル酸を除く)を比較すると,前期ではステロイド24.3%(31例),内視鏡的拡張術5.4%(7例)であったのに対して,後期ではステロイド37.1%(66例),内視鏡的拡張術12.9%(23例)に加え,インフリキシマブ13.5%(24例),免疫調節剤11.38%(21例),白血球除去療法0.6%(1例)と多様になり,治療期間は前期44ヶ月に対し後期87ヶ月であった.このような状況のなか緊急手術症例は7.1%(22/307)で,経年的に比較すると,前期4.7%(6/129)に対し後期では9.0%(16/178)と約2倍になっていた.手術理由では穿孔が最も多く13例,次いで出血4例,腸閉塞,巨大結腸が各2例,腹腔内膿瘍が1例であった.緊急手術症例の術前治療ではステロイドが10例に使用されており,その他の治療としてはインフリキシマブ5例,内視鏡的拡張術2例,免疫調整剤2例であった.【結語】クローン病に対する内科的治療の進歩は外科治療までの期間を延長させていることが推察されたが,一方で緊急手術例が増加し,緊急手術に至る病態も多様化していた.今後外科治療のタイミングを図ることがますます重要になるものと考える. |
索引用語 |
クローン病, 外科治療 |