セッション情報 一般演題

タイトル 073:

関節リウマチに対する生物学的製剤投与によりde novo B型肝炎を発症した一例

演者 山島 美緒(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院消化器内視鏡センター)
共同演者 妹尾 健正(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院消化器内視鏡センター), 楠本 浩一郎(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院消化器内視鏡センター), 小田 英俊(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院消化器内視鏡センター), 木下 昇(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院消化器内視鏡センター), 植木 幸孝(社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院リウマチ・膠原病センター)
抄録 症例は60歳男性。2007年7月より関節リウマチにて当院リウマチセンター通院中。同年8月よりエタネルセプトを開始されるも効果なく、2008年3月中止。プレドニゾロン 10mg、レフルノミド 20mgを投与されていた。その時点では、HBs-Ag陰性であった。2008年4月24日より治験薬である生物学的製剤(抗CD20モノクローナル抗体)を開始。5月8日2回目、10月9日3回目、10月23日4回目投与を行った。5回目投与を2009年3月23日に予定していたが、2月20日の血液検査でHBs-Ag陽性となったため、2月27日精査目的で当科紹介。de novo B型肝炎発症の可能性があるため、生物学的製剤の投与を中止し、エンテカビル内服を開始した。しかしその後、肝機能が上昇してきたため、加療目的で3月31日入院となった。入院時、AST 516 IU/l、ALT 886 IU/l、LDH 464 IU/l、ALP 386 IU/l、γ-GTP 195 IU/l、T-Bil 0.8 mg/dl、HBs-Ag陽性、HBV-DNA 7.2 (TaqMan法)であった。入院後、強力ネオミノファーゲンシー(SMC)静注を開始。その後、肝機能は徐々に改善し、5月1日退院。外来でもSMC静注を継続し、9月7日にはHBV-DNAも検出感度以下となった。1年後の2010年10月まででエンテカビル内服を中止。その後もHBs-Ag陰性、HBV-DNA陰性で推移しており、B型肝炎の再活性化はみられていない。
HBVキャリアや既感染例において、免疫抑制剤や化学療法薬の使用により宿主の免疫能が低下した場合にHBV増殖の再活性化が起こり、肝炎が再燃するde novo B型肝炎が広く知られるようになっており、2009年に免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインも作成されている。本症例はガイドライン発表前より治験が開始されたが、開始当初より定期的にHBs-AgやHBV-DNA量の測定を行っており、HBs-Ag陽性を確認した時点でエンテカビルを開始、その後肝炎を発症したものの、劇症化には至らなかった。
関節リウマチに対する生物学的製剤投与でのde novo B型肝炎発症について、文献的考察を加え報告する。
索引用語 de novo B型肝炎, 生物学的製剤