セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専76:

直腸周囲膿瘍を合併した4型大腸癌の一例

演者 松野 雄一(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 脇坂 佳世(九州大学大学院病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 北園 孝成(九州大学大学院病態機能内科学), 当間 宏樹(九州大学大学院臨床腫瘍外科), 植木  隆(九州大学大学院臨床腫瘍外科), 平橋 美奈子(九州大学大学院形態機能病理学), 家守 三雄(かもりクリニック)
抄録 症例は49歳男性。3ヶ月ほど前より出現してきた進行性の排便困難感を主訴に、2011年1月かもりクリニックを受診。下部消化管内視鏡検査で、直腸後壁を中心とする浮腫状の発赤粘膜と肛門縁直上に径5mm程度のIsポリープを認めた。浮腫状粘膜からは悪性所見は得られなかったが、小ポリープの生検結果がgroup 4であった。精査目的で当科紹介予定であったが、1月21日に急激な腹痛を訴え、イレウス疑いで他院に救急搬送された。直腸指診で全周性の狭窄と圧痛あり、骨盤部造影CTでは直腸壁の全周性肥厚と周囲に膿瘍形成を認めたため、臀部からドレナージ術が施行された。ドレナージ術後、症状は一旦軽快傾向にあったが、3月に再度狭窄症状が出現したため、3月28日にS状結腸に人工肛門を造設された。しかし、その後も直腸周囲膿瘍の改善なく肛門部痛と臀部からの浸出液流出が持続するため、精査目的で5月19日に当科紹介入院となった。下部消化管内視鏡検査では、Ra~Rbは全周性に発赤浮腫状で管腔狭窄を呈していたが、腫瘍性変化は明らかではなかった。しかし、前医検査時にIsポリープが認められた部位にIIa+IIc様隆起を認め、対側には痔瘻開口部と思われる陥凹を伴っており、同部位には腫瘍性変化が疑われた。これらの部位を含め多数箇所からの生検組織採取を行ったが悪性所見は得られなかった。FDG-PETでは直腸周囲を中心にFDG集積を認め、むしろ直腸周囲膿瘍に合致する所見と判断されたが、造影CTならびにMRIでは4型直腸癌をより疑う所見であり、CEA54ng/mlと著明高値であることから直腸周囲膿瘍を合併した4型直腸癌と総合的に判断した。6月8日に腹会陰式直腸離断術+S状結腸人工肛門造設術を施行。切除標本の病理診断は粘液産生を伴い全層性に浸潤する直腸癌で痔瘻形成を伴っていた。現在、外来にて術後化学療法を施行中である。4型大腸癌は全大腸癌の0.8%程度と頻度が低く、内視鏡検査や生検診断では腫瘍性変化を捉えづらいことから術前診断に苦慮する場合も少なくない。今回直腸周囲膿瘍を合併し複雑な臨床経過を呈した4型直腸癌の一例を経験したため、文献的考察を加え報告する。
索引用語 4型大腸癌, 直腸周囲膿瘍