セッション情報 ワークショップ4「進行肝細胞癌の治療戦略」

タイトル WS4-11:

Vp4、Vv3の高度進行肝癌に対する外科治療を含めた治療戦略

演者 曽山 明彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
共同演者 高槻 光寿(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 村岡 いづみ(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 山口 泉(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 田中 貴之(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 木下 綾華(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 原 貴信(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 大野 慎一郎(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 望月 響子(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 伊藤 信一郎(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 山之内 孝彰(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 藤田 文彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 足立 智彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 金高 賢悟(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 南 恵樹(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 黒木 保(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 江口 晋(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
抄録 Vp4、Vv3の高度進行肝癌に対しては肝切除のみが短期死亡を回避できる治療であり、分子標的治療を含む集学的治療によって長期生存を得られる場合もある。Vp4、Vv3の高度進行肝癌に対する治療例を報告する。Vp4症例)30代男性。B型肝硬変に合併した肝右葉の巨大な肝癌あり。門脈腫瘍栓が門脈左右分岐部を超えて肝側は左臍部、腸側は上腸間膜静脈へ及んでいた。肝門部操作の際、門脈閉塞に伴う側副血行の発達が著明なため、出血の制御目的で門脈・大静脈シャントを作成した(空腸間膜静脈脱血、右内頸静脈返血)。右肝動脈、右肝管を切離し、門脈右枝に切開を加えバルーンカテーテルを用いて可及的に腫瘍栓を摘出したが、門脈臍部の腫瘍栓はP4まで進展しており残存したため、臍静脈を再開通させ、同部に8Frのバルーンカテーテルを挿入して逆行性に押し出すようにして門脈右枝の切開部より腫瘍栓を全摘出した。肝拡大右葉切除をテープガイド下に行い、病巣を全摘除した。術後合併症なく退院し、補助動注化学療法後、フォローアップ中に肝内多発再発を認め、ソラフェニブ投与。現在術後15ヶ月生存中。Vv3症例)80代男性、肝癌に対し前区域切除術後、8ヶ月後に胸部圧迫感あり、造影CTで中肝静脈から進展し右房内を占める径5cmの腫瘍栓を認めた。急性心不全による突然死を回避するため、心臓血管外科と合同で手術を施行した。開胸開腹し、まず肝下部IVCをテーピング、続いて肝十二指腸間膜を一括してテーピング、Pringle法とIVCクランプを併用しつつ体外循環下に心房を開いて腫瘍栓を可及的に摘出、中肝静脈内に少量残存するのみの状態にした。肝門部で左グリソンを処理し、拡大左葉切除術を施行した。切離した左/中肝静脈断端には腫瘍栓の残存を認めず、病巣は全摘出された。術後合併症なく退院、現在術後2ヶ月でCTでは腫瘍栓の遺残はなく、自宅で療養中である。結語)Vp4/Vv3の高度進行肝癌であっても、種々の工夫や他科との連携により病巣の摘出は可能であり、短期死亡を回避してその後の集学的治療や緩和医療へ引き継ぐことができる。
索引用語 肝細胞癌, ソラフェニブ