セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

上部消化管癌に対する鏡視下手術の長期成績

タイトル 外PD16-7:

食道癌に対する胸腔鏡手術の短期および長期成績

演者 李 栄柱(大阪市立大大学院・消化器外科学)
共同演者 大杉 治司(大阪市立大大学院・消化器外科学), 岸田 哲(大阪市立大大学院・消化器外科学)
抄録 【はじめに】胃癌、大腸癌では鏡視下手術が保険収載されているが、食道癌においては未だ認められていない。その影響もあるのか、日本胸部外科学会の2008年の集計では年間約1000例(約2割)しか食道癌に対する鏡視下手術が行われていない。当科では1996年から胸腔鏡下食道癌手術を418例に施行している。当科における食道癌に対する胸腔鏡手術の短期成績および各進行度別の長期成績を報告する。【当科の胸腔鏡下食道癌手術の適応、術式】1)広範な胸膜癒着がない2)術中片肺換気で麻酔維持が可能である3)腫瘍深達度はT4未満である4)術前放射線治療を行っていないの4条件を満たした症例を適応としている。体位は速やかに開胸手術へ移行できるために左側臥位としている。縦隔郭清には十分な縦隔展開が必要であるため、剛性のある幅3 cmの気管鈎を挿入すべく右第5肋間前腋窩腺を中心に5 cmの小切開を置き、その周囲に4つのポートを留置している。接近拡大視による微細解剖の把握が可能となるように、エネルギーデバイスは連続して剥離、切離、通電凝固が可能なモノポーラの鋏だけを用いている。【治療成績】418例中、広範囲胸膜癒着20例、T4が13例などの原因で42例が開胸移行となったが、重篤な術中偶発症は認めていない。平均胸部操作時間は193分、出血量は192 g 、郭清縦隔リンパ節個数は34個であった。%VCの低下は、術後1ヶ月で11%、術3カ月では15%のみであった。5年生存率は,pStage 0では91%,Iは90%,IIは68%,IIIは56%と胃癌とほぼ同等の成績であった。再発は105例、28%に認められたが、初発再発形式は血行性再発が11.5%、リンパ行性再発が15.2%で、うち縦隔リンパ節再発は5.6%、胸膜播種を含めた局所再発が1.3%で、領域制御率は93%であった。【まとめ】当科の食道癌に対する胸腔鏡手術は、呼吸機能障害を軽減でき、領域コントロール、長期成績も良好である。今後、速やかな食道癌に対する鏡視下手術の多施設臨床試験が望まれる。
索引用語 食道癌, 胸腔鏡手術