抄録 |
ベーチェット病は全身に病変を引き起こす難治性炎症性疾患である。腸型ベーチェット病は一亜型で、確立された内科的治療がなく出血や穿孔を来しやすいと言われている。腸型ベーチェット病の手術症例に関して予後の検討を行った。【方法】外科手術を施行した腸型ベーチェット病の6例について、診断から手術までの期間と手術回数、予後に関して検討した。【結果】男性5例、女性1例の計5例のうちで完全型は1例のみで5例は不完全型であった。ベーチェット病と診断されてから手術を行うまでの期間は4ヵ月から14年とさまざまで平均5.5年であった。腸管切除は5例に行われており、2例は吻合部再発を来して2回ずつ、1例は3回切除を施行し、1回のみは2例であった。1例は全大腸の多発性潰瘍に対して腸管切除を行わずに回腸人工肛門造設を施行した。1回腸管切除を行った症例のうち1例は回腸末端部の狭窄に対する回盲部切除、小腸部分切除術で、もう1例は結腸に計10カ所の消化管穿孔を来たし、緊急に結腸亜全摘術を行った。2例とも15年以上経過しているが腸管病変の再発はなく、腸管外病変も自然軽快していた。2回腸管切除を行った症例のうちで1例は1回目に回盲部潰瘍に対して右半結腸切除術、小腸部分切除術を行い、その1年後に吻合部潰瘍に対して吻合部切除を施行したが、ステロイドを投与中に消化管出血を来たして死亡した。もう1例は回盲部炎症性腫瘤を形成しており57cmの切除腸管に計7カ所の潰瘍を認めた。4年8ヶ月後に吻合部に炎症性腫瘤を形成し、一塊となった腸管を約40cm切除した。2回目の手術後3年経過し再発の症状を認めていない。3回手術を施行した1例は狭窄症状に対して回盲部切除、下行結腸切除を行い、術後に縫合不全と皮膚瘻を来たし、再切除および回腸S状結腸吻合術を施行した。9年後に吻合部潰瘍および狭窄に対して吻合部切除を行った。術後1年10か月経過し再発の症状を認めていない。【結語】腸管外病変の悪化した症例は認めず、消化器病変のコントロールが予後に影響すると考えられた。 |