セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専85:

直腸MALTリンパ腫治療後に潰瘍性大腸炎を発症した1例

演者 上田 紘子(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 坂江 貴弘(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 田口 宏樹(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 牧野 智礼(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 佐々木 文郷(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 田ノ上 史郎(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 橋元 慎一(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 瀬戸山 仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 嵜山 敏男(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 59歳の女性。既往歴として2000年にS状結腸癌(stage III)に対し、S状結腸切除術+化学療法を施行。また、2005年に直腸MALTリンパ腫 に対して放射線療法(計39.6Gy)を施行し、寛解状態となっている。2007年ごろより排便時の出血が出現したため、大腸内視鏡検査を施行したところ、放射線照射部位と一致する易出血性の粗造な粘膜を認めたため、放射線性直腸炎と診断し、対症療法的に5-ASA製剤の投与(内服、注腸)にて経過観察を行った。しかし、本人のコンプライアンス不良もあり、症状は徐々に増悪、頻回の顕血便(6回/日以上)に加え、腹痛、発熱(37.5℃以上)が出現するようになったため、2011年6月に精査加療目的に当科入院となった。入院後の内視鏡的検査では、直腸に不整形潰瘍、粘膜脱落所見を認め、さらに虫垂孔周囲にも膿性粘液の付着を認めた。虫垂の生検結果では、炎症細胞の浸潤と杯細胞の減少を認めたが、陰窩膿瘍や明らかな腺の配列異常は認めなかった。注腸X線検査では直腸から脾弯曲部までに連続してハウストラの消失や鈍化、鉛管様所見、斑状フレック、network patternの消失を認めた。以上の所見に加え、病変が放射線照射野外に及んでいたことから放射線性直腸炎ではなく潰瘍性大腸炎と考え、診断基準に照らし合わせたところ確定診断を得た。赤沈は80mm(>30mm)と上昇しており、重症度分類では重症であったため、ステロイド全身投与による治療を開始した。以後、症状は速やかに改善。ステロイド開始後5週間目には軽快退院となった。我々が検索しえた範囲では、潰瘍性大腸炎の治療中にMALTリンパ腫の発症を認めた報告は散見されるが、潰瘍性大腸炎に先行して、MALTリンパ腫が発症したという報告例はなかった。本症例は、進行が緩徐であったことに加え、症状出現当初は病変が放射線照射部位に一致しており生検不可能であったことも重なり、診断に時間を要した症例であった。特異な経過を辿り、示唆に富む症例と考えられ、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 MALTリンパ腫, 潰瘍性大腸炎