セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研54:

アフタ性大腸炎を呈した糞線虫症の1例

演者 鵜木 果奈(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 小牧 祐雅(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 牧野 智礼(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 橋元 慎一(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 田ノ上 史郎(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 瀬戸山 仁(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 嵜山 敏男(鹿児島大学病院光学医療診療部), 坪内 直子(国立病院機構鹿児島医療センター消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 73歳の男性。鹿児島県内離島に在住。既往歴として心房細動、脳梗塞がある。10年ほど前から自覚していた便秘を主訴に前医を受診した。下部消化管内視鏡検査(CS)で、横行結腸から下行結腸に多発するアフタ様病変を認め、精査・加療目的に当科を紹介された。血液検査では低蛋白血症、軽度の炎症反応上昇を認め、抗HTLV-1抗体が陽性であった。ツベルクリン反応、サイトメガロウイルス抗原、抗赤痢アメーバ抗体は陰性であったが、便より糞線虫(ラブジチス型幼虫)虫体が検出された。当科でのCSでは、盲腸から下行結腸に多数の潰瘍瘢痕を認め、盲腸・横行結腸にはアフタ様病変が散在していた。大腸生検組織には糞線虫を認めないものの、好酸球浸潤を伴う慢性炎症所見がみられた。上部消化管内視鏡検査では十二指腸に顆粒状粘膜、多発するびらんがみられ、生検組織検査で糞線虫虫体を認めた。上部消化管造影検査では十二指腸から上部空腸にかけて、ケルクリング襞の腫大を認めた。以上から消化管糞線虫症と診断し、イベルメクチン投与を開始した。その後、十二指腸のびらんは消失し、盲腸・結腸のアフタ様病変はすべて瘢痕化した。
糞線虫症は、我が国では沖縄県と鹿児島県の南西諸島が浸淫地である。糞線虫はヒトに経皮的に感染し、主に十二指腸から小腸上部に寄生するが、大腸病変は比較的まれである。今回我々は、糞線虫感染によりアフタ性大腸炎を呈したと考えられる症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 糞線虫症, アフタ性大腸炎