セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専70:

日本住血吸虫症を伴った盲腸癌の1例

演者 渋谷 亜矢子(長崎大学大学院腫瘍外科)
共同演者 田中 研次(長崎大学大学院腫瘍外科), 濱崎 景子(長崎大学大学院腫瘍外科), 富永 哲郎(長崎大学大学院腫瘍外科), 若田 幸樹(長崎大学大学院腫瘍外科), 福田 大輔(長崎大学大学院腫瘍外科), 長嵜 寿矢(長崎大学大学院腫瘍外科), 國崎 真己(長崎大学大学院腫瘍外科), 黨 和夫(長崎大学大学院腫瘍外科), 阿保 貴章(長崎大学大学院腫瘍外科), 日高 重和(長崎大学大学院腫瘍外科), 竹下 浩明(長崎大学大学院腫瘍外科), 澤井 照光(長崎大学大学院腫瘍外科), 安武 亨(長崎大学大学院腫瘍外科), 永安 武(長崎大学大学院腫瘍外科), 安倍 邦子(長崎大学病院病理部), 林 徳真吉(長崎大学病院病理部)
抄録 症例は85歳、男性。高血圧、陳旧性心筋梗塞、狭心症のため近医通院中、貧血精査で盲腸に2型腫瘍を認め、生検にて高分化腺癌の診断であった。腫瘍マーカーはCEAが4.6ng/mlと上昇を認めた。腹部造影CTで大動脈周囲にリンパ節が散見されたが、明らかな遠隔転移は認めず、腹腔鏡下回盲部切除術+D3を施行した。病理所見では、異型上皮細胞が乳頭状~腺管状に増殖浸潤し、癒合腺管状の中分化管状腺癌が優勢を占め、診断はtub2, pSE, pN3(13/15), sH0, sP0, cM0, pStageIIIb, INFb, ly3, v3, pPM0, pDM0, pRM0, pR0であった。また、腫瘍近傍の粘膜下層には、石灰化を伴う日本住血吸虫の虫卵と思われる構造物が多数認められた。
日本住血吸虫はかつて山梨県、広島県が流行地域であり、中間宿主の宮入貝の撲滅により新規発生は1978年以来報告されていない。発癌との関連性に関しては、実験系においては感染と発癌の関連性を示唆する報告が多いが、疫学、病理学的検討ではいまだ明確ではない。長期間の罹患による腸管変化が、潰瘍性大腸炎のpseudopolypからadenomaを経て癌化する機序と同一ではないかとする説もある。疫学的検討では、上記流行地域における結腸直腸の悪性新生物の対人口10万の訂正死亡率は全国平均より高く、新規発症のない1980年以降も、流行地での大腸癌死亡率優位が続いていると報告されており、日本住血吸虫患者は大腸癌の進行度が高いとの報告もある。今回、我々は大腸の同一領域に日本住血吸虫感染と大腸癌が重複して認められた珍しい症例を経験したので、報告する。
索引用語 日本住血吸虫, 大腸癌