セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
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タイトル | 研13:Wilson病に認めた肝細胞癌の1例 |
演者 | 荒木 紀匡(佐賀大学医学部内科学) |
共同演者 | 磯田 広史(佐賀大学医学部内科学), 岡田 倫明(佐賀大学医学部内科学), 中下 俊哉(佐賀大学医学部内科学), 高橋 宏和(佐賀大学医学部内科学), 岩根 紳治(佐賀大学医学部内科学), 江口 有一郎(佐賀大学医学部総合診療部), 水田 敏彦(佐賀大学医学部内科学), 尾崎 岩太(佐賀大学医学部内科学), 藤本 一眞(佐賀大学医学部内科学) |
抄録 | 【症例】50歳,男性.【現病歴】21歳時にWilson病と診断.D-ペニシラミンで加療されていたが,2008年(48歳時)に腎障害が出現し,以降は酢酸亜鉛製剤の内服加療を行っていた.2011年2月にEOB-MRIで肝S6に3cm大の動脈早期濃染と肝細胞相で低信号を呈する結節を認め,また両葉に多発する肝細胞相で高信号を呈する結節も認めた.S6結節は画像上典型的な肝細胞癌(HCC)であったため,経カテーテル的肝動脈化学塞栓術を施行した.2011年5月のEOB-MRIではS6治療部の背側に前回と同様の血流動態を示す結節を認めた.Wilson病からの発癌はまれとされているため,腫瘍生検による病理診断のために入院.【既往歴】24歳時に脾臓摘出術.38歳時に食道静脈瘤に対し内視鏡的治療.【入院時現症】身体所見に特記すべき所見なし.【入院時検査所見】WBC 4200 /μl,Hb 10.5 g/dl,PLT 14.9万 /μl,PT 85.4 %,Alb 2.3 g/dl,T-Bil 1.0 mg/dl,AST 44 IU/l,ALT 31 IU/l, AFP 0.9ng/ml,L3 <0.5%,PIVKA-2 47mAU/ml,尿中銅0.066μg/mg・creatinine,尿中亜鉛6.25μg/mg・creatinine【入院後経過】エコーガイド下に肝S6結節より腫瘍生検を行った.病理組織では,細胞密度やN/C比の上昇,索状構造の多層化を認め,高分化(一部中分化)HCCと判断した.組織の銅染色では,銅沈着はほとんど見られなかった.【考察】今回酢酸亜鉛製剤で良好にコントロールされていたWilson病に発生したHCCを経験した.Wilson病は従来HCCが発症することはまれであると認識されてきたが,ここ数年でその報告が増加傾向にある.その理由として,Wilson病に対する治療の進歩により,1)長期予後が改善しその分累積発癌率が上昇する,2)背景肝への銅沈着が無くなることで肝硬変(肝線維化)由来の発癌リスクが上昇する,といった推測がなされている(銅によるHCC発症抑制効果に関するコンセンサスは一定していない).ウイルス性肝炎からの発癌に比べ頻度は低いが,Wilson病患者でも発癌に注意して日常診療にあたる必要がある. |
索引用語 | Wilson病, 発癌 |