セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研05:

結節性紅斑、腹部リンパ節腫脹、肝機能異常を契機に診断された結核性リンパ節炎の1例

演者 次郎丸 高志(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科 )
共同演者 冨田 哲也(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科 ), 上野 新子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科 ), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科 ), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科 )
抄録 【症例】 50歳台、男性。元来健康で健康診断でも異常を指摘されたことはなかった。当院受診1週間前より、両下肢の腫脹が出現、痛みが出現してきたため紹介来となった。呼吸器症や消化器症状は認めなかった。特記する既往歴を認めず、常用薬剤もなかった。家族および接触者に結核罹患者は認めなかった。
 身長170 cm、体重67 kgでBMI 27.2であった。口腔内にアフタを3か所認めた。腹部は平坦で軟、肝脾触知せず、圧痛は認めなかった。表在リンパ節触知しなかった。両下腿に熱感、疼痛を伴う紅斑を認めた。AST 52 IU/L、ALT 88 IU/L、ALP 853 IU/L、γ-GTP 300 IU/L と肝機能異常を認め、CRPは14.9mg/dlと上昇していた。肝炎ウイルス関連マーカーは陰性であり、免疫グロブリンも正常であった。CEA, CA19-9は正常でsIL-2Rは779U/mlと軽度の上昇を認めるのみであった。皮膚生検を施行したところ結節性紅斑の所見であった。胸部レントゲン写真で異常所見を認めなかった。腹部超音波検査およびCTで門脈と下大静脈の間に径30mmのリンパ節の腫脹を認めた。肝胆膵に悪性腫瘍を認めなかった。大腸内視鏡検査で横行結腸に早期癌を認める以外に特記所見を認めなかった。
 PET検査を施行したところ、腹部のリンパ節に高度の異常集積を認め、さらに鎖骨上窩や上縦隔リンパ節にも軽度の集積を認めた。鎖骨上窩のリンパ節生検を施行したところ、乾酪壊死を伴う肉芽腫を認め、結核菌のPCRが陽性であったことから結核性リンパ節炎と診断した。抗結核薬4者併用療法を6か月間施行したところ、リンパ節の縮小を認めた。
【考察】 結節性紅斑は種々の感染症や悪性腫瘍、ベーチェット病、サルコイドーシス等の様々な内科的疾患に合併することが知られており、内科疾患の有無の精査が重要である。結核で結節性紅斑を合併した報告も多く、常に念頭におく必要があると考えられた。結核性リンパ節炎は頸部に多く、腹部のリンパ節炎は比較的まれである。本症例は胸部や大腸に結核病変を認めず診断に苦慮をした。鑑別診断を進める上で大変示唆に富んだので報告する。
索引用語 腹部結核性リンパ節炎, 結節性紅斑