セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専16:

肝硬変を伴わない門脈大循環短絡の形成により高アンモニア血症を発症した2例

演者 田代 茂樹(済生会福岡総合病院 内科)
共同演者 山崎 晃裕(済生会福岡総合病院 内科DELIMITER国立病院機構 九州医療センター 消化器科), 森園 周祐(済生会福岡総合病院 内科), 東 宣彦(済生会福岡総合病院 内科), 落合 利彰(済生会福岡総合病院 内科), 壁村 哲平(済生会福岡総合病院 内科), 井浦 とも(済生会福岡総合病院 神経内科), 山田 猛(済生会福岡総合病院 神経内科), 岡本 大佑(済生会福岡総合病院 放射線科), 松本 俊一(済生会福岡総合病院 放射線科), 中島 明彦(済生会福岡総合病院 病理診断科)
抄録 【症例1】77才女性【主訴】構音障害【入院時現症】意識清明、四肢の麻痺・感覚障害なし、構音障害あり、その他以上所見なし【検査所見】血液生化学検査: NH3:143μg/dL・明らかな肝疾患を示唆する所見(-)、頭部MRI:T1で淡蒼球に高信号域(+)、造影CT:上腸間膜静脈から右卵巣静脈を介する遠肝性側副路(+)、【症例2】68才女性【主訴】動揺する四肢の動かしにくさ【入院時現症】意識清明、明らかな四肢麻痺・感覚障害なし、その他異常所見なし【検査所見】血液生化学検査: AST:46U/L,ALT:36U/L,NH3:93μg/dL、明らかな肝疾患を示唆する所見なし、頭部MRI:T1で淡蒼球に高信号域(+)、造影CT:上腸間膜静脈から右卵巣静脈を介する遠肝性側副路(+)【2例の入院後経過】脳梗塞様症状が見られたため、頭部MRIを施行したところ、高NH3血症に特異的な所見が得られた。精査目的に施行した腹部CTを施行したところ、上腸間膜静脈から右卵巣静脈を介する門脈大循環短絡路が認められた。高NH3の原因として門脈大循環短絡路が考えられたため、これに対しB-RTOを施行しshuntの塞栓を行った。【考察】本症例では非肝硬変性の門脈大循環短絡の形成が認められ、門脈血が直接大循環系静脈に流れ込み、肝臓での代謝を受けないことで様々な有害物質が体内に蓄積したと考えられた。このような門脈大循環短絡の形成が原因で発症する疾患群を門脈大循環短絡症と定義している。この門脈大循環短絡症はNH3などの蓄積により動揺する神経症状で発症するとされており、またMn、Cuなどの微量金属イオンが肝臓で代謝されずに脳に沈着することでMRI・T1強調画像で淡蒼球に高信号を呈するとされている。脳梗塞様症状で発症するため、本症例のように肝疾患を持たない場合診断が遅れる可能性があり、繰り返す神経・精神症状がみられる場合は、積極的に本疾患を疑うべきであると考えられた。
索引用語 門脈大循環短絡, 肝性脳症