セッション情報 ワークショップ5「難治性消化管疾患の外科治療」

タイトル WS5-12:

肛門周囲膿瘍を伴う炎症性腸疾患に発生したcolitic cancerの3例

演者 藤田 文彦(長崎大学大学院移植・消化器外科)
共同演者 川上 悠介(長崎大学大学院移植・消化器外科), 山口  泉(長崎大学大学院移植・消化器外科), 平原 正隆(長崎大学大学院移植・消化器外科), 山之内 孝彰(長崎大学大学院移植・消化器外科), 伊藤 信一郎(長崎大学大学院移植・消化器外科), 金高 賢悟(長崎大学大学院移植・消化器外科), 大野 慎一郎(長崎大学大学院移植・消化器外科), 望月 響子(長崎大学大学院移植・消化器外科), 曽山 明彦(長崎大学大学院移植・消化器外科), 足立 智彦(長崎大学大学院移植・消化器外科), 林田 直美(長崎大学大学院移植・消化器外科), 南  恵樹(長崎大学大学院移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学大学院移植・消化器外科), 黒木  保(長崎大学大学院移植・消化器外科), 江口  晋(長崎大学大学院移植・消化器外科)
抄録 【背景と目的】クローン病や潰瘍性大腸炎代表とする炎症性腸疾患は近年増加傾向にあり、日常診療において多く経験する疾患となった。また、これらの疾患では、痔瘻や肛門周囲膿瘍など肛門周囲の炎症を伴うことも多く、肛門痛や肛門狭窄により腸管内の精査などが困難な場合がある。当科では肛門周囲膿瘍を伴い、ドレナージ術後の精査にてcolitic cancerの診断となった3例を経験したので報告する。【症例1】45歳、男性。潰瘍性大腸炎の診断にてステロイドによる加療が行われていたが、肛門部痛と発熱を認め受診した。肛門周囲に強い圧痛を認め、十分な精査ができないため膿瘍のドレナージを先行させた。切開排膿後に行った大腸内視鏡検査では、下部直腸に進行性の直腸癌を認め、腹腔鏡補助下大腸全摘術および回腸嚢造設を行った。【症例2】36歳、男性。15歳時にクローン病の診断となっていた。肛門周囲の強い圧痛を認め、クローン病に伴う痔瘻および肛門周囲膿瘍と診断された。骨盤造影CT検査にて直腸周囲に強い炎症を認め、また、直腸壁の肥厚も伴っていたため、腰椎麻酔下に肛門周囲膿瘍ドレナージおよび直腸壁の生検を行った。生検の結果直腸癌の診断となり、二期的に根治術を予定したが癌性腹膜炎のため化学放射線療法が行われた。【症例3】35歳、女性。20歳よりクローン病を指摘されていたが、特に加療は行われていなかった。痔瘻を自覚するも2年間放置していため、広範囲な肛門周囲膿瘍となり受診した。肛門は狭窄しており、強い疼痛を伴っていたため消化管の精査は困難であった。腰椎麻酔下に臀部のドレナージを行い、直腸壁を生検したところ直腸癌の診断となった。二期的に大腸全摘術および回腸嚢造設術を施行した。【まとめ】炎症性腸疾患に伴う痔瘻では、時に肛門周囲膿瘍を合併し、強い炎症を伴うため直腸内の精査が困難となることがある。炎症に対する処置を行うと共に、適切な方法により腸管内の精査を行う必要がある。
索引用語 炎症性腸疾患, colitic cancer