セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

上部消化管癌に対する鏡視下手術の長期成績

タイトル 外PD16-8:

胸部食道癌に対する鏡視下手術の治療成績-開胸症例との比較―

演者 上野 正紀(虎の門病院・消化器外科)
共同演者 宇田川 晴司(虎の門病院・消化器外科), 篠原 尚(虎の門病院・消化器外科)
抄録 【目的】鏡視下食道癌手術(VATS:V)の治療成績を開胸症例(OPEN:O)と比較する。【対象と方法】2006年から鏡視下手術を導入し、188例の手術を行った。今回は右胸腔鏡手術、扁平上皮癌の161例を対象とした。左側臥位が標準である。適応はBulkyでないT3症例まで、治療前T4、T3.5に対する放射線治療例は適応外。表在癌は胸管温存、進行癌は合併切除している。気管支動脈は温存している。開胸と同等のen blocリンパ節郭清をおこなう。比較として2000-2005年、術前照射例を除く扁平上皮癌163例を用いた。2つの群は同じ方針で治療をおこなった。【結果】背景では性別、年齢、腫瘍の局在に差はなかった。cT (1/2/3/4)はOPEN vs. VATS= (61/32/69/1) vs. (76/46/38/1)、cN(N0/N1)はO vs. V= (63/100) VS. (82/79)、cStage(I/II/III/IV)はO vs. V= (41/46/51/25) vs. (57/67/24/13)と、OPENがcTは深く(p<0.005)、cN+が多く(p<0.05)、進行したStageが多かった(p<0.05)。術前化療(無/有)はO vs. V= (144/19) vs. (94/66) 。術中は、胸管(温存/合併切除)はO vs. V= (81/82) vs. (78/83)、右気管支動脈(温存/合併切除/不明)はO vs. V= (106/46/9) vs. (94/52/15)と差はない。再建は(胃/回結腸)、O vs. V= (149/14) vs. (130/31) (p<0.05)。病理は、pStage(I/II/III/IV)はO vs. V= (32/58/32/41) vs. (61/55/21/24)とOPENに進行症例が多かった(p<0.05)。胸腔内郭清リンパ節は、O vs. V= 41.7個 vs. 34.7個。治療成績では治療関連死をOPEN 1例、VATS 2例に認めた。5年生存率はO vs. V=68.7% vs. 83.9%。VATS例の観察期間を考え、Stageごとの3生率を比較すると、O vs. V=stage I(93.8 vs. 100), stage II(80.5 vs. 94.3), stage III(70.7 vs. 79.5), stage IV(62.6 vs. 61.1)であった。【考察】VATS導入初期にはcTの浅い症例が多く、cT、cN、cStageの差が生じたと考える。pStageごとの比較で、各ステージとも生存率においてOPENとVATSの差はなく、目的とするリンパ節郭清が達成できていると考える。
索引用語 食道癌, 鏡視下手術