セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

上部消化管癌に対する鏡視下手術の長期成績

タイトル 外PD16-10:

当科における胸腔鏡下食道切除術の長期成績と工夫

演者 竹内 裕也(慶應義塾大・一般消化器外科)
共同演者 川久保 博文(慶應義塾大・一般消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大・一般消化器外科)
抄録 【目的】当科ではこれまで食道癌患者に対する胸腔鏡下食道切除術を160例以上に施行したが,今回その工夫と長期成績について検討した.【対象】1) 当科の胸腔鏡下食道切除術施行例のうち2008年までの81例について周術期合併症と長期成績を検討した.2) 2009年1月より導入したhybrid体位(手術台ローテーションを利用して主に上縦隔操作は従来の左側臥位で行い,中下縦隔操作を人工気胸下腹臥位で行う)による胸腔鏡下食道切除術を従来の左側臥位と比較した.3) 2009年10月より導入した術前3D-CT angiographyによる左右気管支動脈描出の有用性を検討した.【結果】1) 長期成績の検討ではTNM分類第7版 fStage Iで5年生存率76%,fStage II 60%,fStage III 51%であった.当科で以前報告した開胸手術の成績(Ann Surg. 2000)とTNM分類第5版を用いて比較しても遜色ない成績であった.周術期合併症頻度も開胸手術に比べて大差なかった.2) 左側臥位-腹臥位hybrid体位による胸腔鏡下食道切除術をこれまで62例に施行したが全例術中偶発症もなく施行可能であった.中下縦隔は腹臥位の方が良好な術野を得ることができ,左側臥位よりも安全かつ徹底した中下縦隔リンパ節郭清が可能である.腹臥位導入前後での比較では腹臥位導入後で中下縦隔郭清リンパ節個数が有意に増加していた.3) 術前3D-CT angiographyにより左右気管支動脈の様々なバリエーションが術前に把握可能であった.術前3D-CT angiography導入前後の比較では3D-CT導入後で術中出血量が有意に減少し,上縦隔左側(106recL+106tbL)の郭清リンパ節個数が有意に増加した(平均4.2個 vs 2.2個).【結語】胸腔鏡下食道切除術はその適応を誤らなければ短期・長期成績ともに従来の開胸手術と遜色ないと考えられる.また安全かつ合理的な縦隔リンパ節郭清を行うためには手技だけでなく体位の工夫や術前画像評価が重要である.
索引用語 食道癌, 胸腔鏡下食道切除術