セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル

術後10年目にpulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM) を発症した早期胃癌の1例

演者 小西 優輝(松下記念病院 )
共同演者 磯崎 豊(松下記念病院 消化器科), 安田 知代(松下記念病院 消化器科), 山西 正芳(松下記念病院 消化器科), 宇都宮 栄(松下記念病院 消化器科), 山口 俊介(松下記念病院 消化器科), 酉家 章弘(松下記念病院 消化器科), 沖田 美香(松下記念病院 消化器科), 長尾 泰孝(松下記念病院 消化器科), 小山田 裕一(松下記念病院 消化器科), 古倉 聡(京都府立医科大学 消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医科大学 消化器内科), 吉川 敏一(京都府立医科大学 消化器内科)
抄録 67歳、男性。57歳時に他院で胃癌(por+sig, m, infβ, ly1, v0; T1N2M0, StageII)に対して幽門側胃切除術を施行。UFTによる術後化学療法を1年間施行し、術後5年間再発を認めず、終診となっていた。2009年11月より慢性咳嗽が出現し,近医で気管支喘息として加療されていたが、010年4月下旬より血小板の減少、ALPの上昇傾向を認め、2010年6月精査目的に当院紹介となる。厚労省研究班のDIC診断基準では8点で、CA19-9の上昇も認め、悪性疾患の関与が考えられた。胸腹部CTや上・下部消化器内視鏡検査では特記すべき所見は無かったが、FDG-PETで多発性骨転移を認め、骨髄生検から胃癌による播種性骨髄癌症と診断した。S-1+CDDP併用療法を開始したところ、DICスコアは一旦改善(3点)した。しかし3コース終了後の10月にDICスコアの悪化(7点)とCA19-9の再上昇を認め、入院。化学療法のレジメンをS-1+CPT-11に変更したが、入院第7病日に両肺野に網状陰影が出現するとともに労作時の呼吸困難感と低酸素血症を認めた。癌性リンパ管症や感染を疑い、ステロイドパルスや抗菌薬の投与を行ったが改善無く、第19病日に呼吸困難感の急激な悪化の後,呼吸停止を生じ死亡された。死後の病理解剖で末梢の肺動脈に多数の腫瘍塞栓とともに線維性内膜肥厚を認め,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM)と診断され、PTTMによる肺高血圧症が死因と考えられた。PTTMはHerbayらにより提唱された肺動脈腫瘍塞栓症の特殊型で、単なる腫瘍塞栓ではなく、それを契機として局所に凝固が亢進し、血管内膜の肥厚、肺高血圧、DICなどを引き起こすとされている。本疾患は悪性腫瘍剖検例の0.9-3.3% に認められ、癌治療に関わる臨床医の場合、時に遭遇する可能性があるため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 胃癌, pulmonary tumor thrombotic microangiopathy (PTTM)