セッション情報 一般演題

タイトル

成人に発症した特発性腸重積の一例

演者 中島 智樹(済生会京都府病院 内科)
共同演者 信田 みすみ(済生会京都府病院 内科), 山岡 純子(済生会京都府病院 内科), 渋谷 明子(済生会京都府病院 内科), 中嶋 俊彰(済生会京都府病院 内科), 吉川 敏一(京都府立医科大学 消化器内科学)
抄録 成人発症の腸重積は小児と比較して頻度は低く、さらにその多くは腸管の器質性病変に起因するため、特発性腸重積は極めて稀である。今回、われわれは成人に発症した上行結腸の特発性腸重積を経験したので報告する。症例:33歳、男性。既往歴:アトピー性皮膚炎のほか、普段から下痢気味で、他院で過敏性腸疾患を疑われたことがある。現病歴:平成22年8月8日から下痢軟便が出現。11日夜から間欠的にしめつけられるような痛みを右側腹部に自覚するようになり当院救急を受診。軟便が出ており、時折悪心があるが嘔吐なし。理学所見上、腹部は平坦軟で軽度の圧痛を右側腹部に認めるが反跳痛なし。その日は精査を希望されず、整腸剤が処方された。翌日、軟便はほぼ消失するも痛みが続くため、再び外来受診した。腸蠕動が軽度亢進している以外、理学所見は前日とほとんど変わらず。血液検査ではWBC 7700、CRP 0.81。腹部単純CTを施行したところ、上行結腸内に腸管構造と腸間膜脂肪織が入り込んでいるように見え、腸重積が疑われた。CT上、原因となる病変は指摘できなかった。高圧浣腸を行い、大腸ファイバー検査をしたところ、上行結腸のみに強い発赤を認めた。盲腸、虫垂、バウヒン弁から20cmの範囲の回腸には異常を認めず、上行結腸の重積であったと推測された。その後、1年間経過観察しているが、重積の再燃はみられない。考察:腸重積発症の機序については、何らかの刺激により腸管の輪状筋が痙攣性に収縮し、肛門側に隣接した弛緩腸管に嵌入する痙攣説が有力である。本症例では、器質疾患はなく重積を生じた原因は不明であるが、下痢軟便が先行していることから、大腸蠕動運動の亢進が重積発症の一因となった可能性が考えられる。
索引用語 特発性腸重積, 成人発症