セッション情報 ワークショップ1「上部消化器及び小腸出血における最近の動向」

タイトル

当院における原因不明消化管出血症例(特に血管性病変)の検討

演者 福島 政司(神戸市立医療センター中央市民病院 消化器センター内科)
共同演者 井上 聡子(神戸市立医療センター中央市民病院 消化器センター内科), 河南 智晴(大津赤十字病院 消化器内科)
抄録 【目的】バルーン内視鏡、カプセル内視鏡(capsule endoscopy;CE)の出現により、原因不明消化管出血(obscure gastrointesinal bleeding;OGIB)の診断、治療は進歩している。当院では2003年よりダブルバルーン内視鏡(double balloon endoscopy;DBE)、2008年よりCEを導入し、小腸疾患の診断、治療を行っている。今回我々はCE導入後DBEにて観察しえたOGIBの原因疾患を調査し、そのうち頻度が高いと報告されている血管性病変について検討を加えた。【方法】対象は、2008年6月から2011年5月までにOGIB精査として、CEとDBEを施行された82症例132件とDBEを施行された17症例26件の合計99症例158件(男性:女性=57:42、平均年齢64.8±16.9歳、13~87歳)。【成績】99症例中72症例(72.7%)に小腸内出血性病変、23症例に小腸外出血性病変(24.2%)を認めた(8症例重複あり)。小腸に認められた病変の内訳は、多い順に血管性病変36症例(50.0%)、潰瘍性病変15症例、腫瘍性病変10症例、NSAIDs起因性小腸病変5症例、憩室4症例であり、その他多種多様な病変を認めた。血管性病変の内訳はangioectasia33症例、dieulafoy病変1症例、angioectasia とdieulafoy病変の併存例1症例、動静脈奇形1症例となっており、全36症例中、抗血栓療法は17症例に施行されており、基礎疾患は多い順に心、血管系疾患(17症例)、血液透析(6症例)、肝硬変(4症例)となっていた。血管性病変の36症例中CE、DBEともに施行されたのは31症例(DBEで観察していない部位を後日CEで観察した1症例除く)であり、その内27症例(87.1%)でCEでも血管性病変を指摘しえた。血管性病変に対する平均DBE回数は1.88回(1~6回)であった。angioectasiaに憩室出血を合併した一例と動静脈奇形の一例以外は最終的に内視鏡的止血が可能であった。【結論】OGIBの原因疾患は諸施設の報告と同様、血管性病変が最多であったが、多岐にわたっていた。血管性病変のCEでの検出率は高く、低侵襲でありDBE時のルート選択などにも役立つことから、状況が許せばDBE前にCEを施行するのは診断、治療に有用と考えられた。
索引用語 原因不明消化管出血, 小腸内視鏡