セッション情報 | Freshman Session(卒後2年迄) |
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タイトル | 核酸アナログ製剤未使用のB型肝硬変にエンテカビル投与中、YIDD変異により viral breakthrough を生じた一例 |
演者 | 和田 佑馬(市立吹田市民病院) |
共同演者 | 永瀬 寿彦(市立吹田市民病院), 勝野 広嗣(市立吹田市民病院), 黒住 真由美(市立吹田市民病院), 笹川 廣和(市立吹田市民病院), 大嶋 太郎(市立吹田市民病院), 長谷川 大(市立吹田市民病院), 奥田 悠紀子(市立吹田市民病院), 長生 幸司(市立吹田市民病院), 黒島 俊夫(市立吹田市民病院) |
抄録 | 【はじめに】本邦ではB型慢性肝疾患に対して、耐性変異出現率の低いエンテカビル(ETV)が核酸アナログ未治療症例の第1選択薬として用いられている。通常、ETV投与中にviral breakthroughを起こす場合、ETV耐性となる184、202、250番にアミノ酸変異を認める。今回ETV投与中にETV耐性変異を認めず、YIDD変異により viral breakthrough を生じた過去に核酸アナログ製剤使用歴のないB型肝硬変の一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。【症例】47歳男性。既往歴は糖尿病。家族歴は母、叔父及び叔母が糖尿病に罹患。現病歴は、1987年にB型肝炎で入院。退院後は放置していた。2007年6月20日Plt4.4万/μlと血小板減少を指摘され、精査加療目的に同年7月11日当院紹介受診となった。来院時現症には特記すべき事はなかった。血液検査でALT56IU/L、AST51IU/L、HBs抗原陽性、HBe抗原陽性で、HBV-DNAはAmplicorPCR法で6.8Log copy/mlと上昇を認めた。血液検査、画像検査にてB型肝硬変と診断し、2008年1月18日ETV0.5mg/日内服開始とした。投与後約1年半で感度以下まで低下し推移していたが、2010年11月19日HBV-DNAがTaqManPCR法で2.9、2011年1月21日には3. 9Log copy/mlと上昇。INNO-LiPA法にてラミブジン(LVD)耐性である204番のアミノ酸変異YIDD変異を認めたが、ETV耐性変異は認めなかった。まだ、breakthrough hepatitisは起こっていなかったが、肝硬変であることを考慮しETV継続投与に加え、2月10日よりアデホビル10mg/日の併用投与を開始した。開始後ウイルス量は低下した。【結語】我々はETV耐性変異を認めず、YIDD変異のみで viral breakthrough を生じたB型肝硬変の一例を経験した。このような症例は核酸アナログ製剤投与前にすでにLVD耐性変異が存在することが示唆されている。また、ETV投与中のviral breakthroughもETVに対する感受性がそれほど低くないため一過性に終わる場合もあるようである。本症例に対する明確な治療法は確立されていないが肝不全へ進行するリスクを考慮しアデホビルを併用投与とした。 |
索引用語 | エンテカビル, B型肝硬変 |