セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

門脈血栓症によるイレウスを合併した本態性血小板血症の1例

演者 古谷  仁輝(財団法人 住友病院 消化器内科)
共同演者 岸田 修(財団法人 住友病院 消化器内科), 吉田 有里(財団法人 住友病院 消化器内科), 光藤 元子(財団法人 住友病院 消化器内科), 木下 和郎(財団法人 住友病院 消化器内科), 藤本 敬(財団法人 住友病院 消化器内科), 山田 晃(財団法人 住友病院 消化器内科)
抄録 症例は70歳代男性。前立腺癌全摘後で当院泌尿器科通院中であったが,2009年7月より腹満感および腹部全体の間欠的な疼痛がみられ軽快しないため当院救急外来受診。発熱はないが血液検査でWBC45100/μL,CRP10.95mg/dL,PLT84.6×104/μLと炎症反応および血小板の上昇を認めたため緊急入院となった。入院時施行の造影CTでは,門脈右枝・本幹・上腸管膜静脈・脾静脈内に血栓を疑う造影不良域がみられ,これが原因と思われる骨盤内小腸壁の浮腫状肥厚とその口側腸管の拡張および腹水が認められたため、門脈血栓症によるイレウスと診断。イレウス管挿入後,経皮経肝ル-トで門脈内にカテ-テルを留置し,ICU入室の上,経門脈的にウロキナ-ゼを投与(12万単位急速注入後,時間2万単位から漸減)を開始。翌日には中等量の血便がみられたため,再度造影CTを施行したが,明らかな腸管壊死所見はなく虚血性腸炎の状態と考えられた。その後急速な低アルブミン血症の進行と胸腹水増加,循環呼吸不全がみられたが,集中管理により状態改善。第7病日の門脈造影では,上腸管膜静脈の血栓は大部分消失し,側副血行路から肝内門脈まで造影された。血栓溶解療法に引き続き,抗凝固療法を行い第35病日退院となった。原因検索のため過去の採血デ-タを見直してみると,入院1年前から血小板数が50万/μL以上,白血球数が1万/μL以上に増加し,末梢血巨大血小板の出現がみられた。骨髄穿刺を施行したところ巨核芽球の増生を認めるが線維化や染色体異常はなく本態性血小板血症の診断に至った。イレウス状態改善後にhydroxyureaを開始し血小板数は30万/μL前後で安定している。本態性血小板血症による血栓症は,小動脈炎による微小血管血栓症が多く,脳梗塞や心筋梗塞など比較的太い動脈の血栓は少なく,さらに静脈系に血栓を生じる報告は稀である。感染や炎症所見がないのに白血球や血小板増多が持続してみられる症例では,本例のような病態も鑑別疾患の一つとして認識する必要があると思われた。
索引用語 門脈血栓症, 本態性血小板血症