セッション情報 一般演題

タイトル

膵管癌との鑑別に苦慮した膵膿瘍の一切除例

演者 島本 真里(京都第二赤十字病院 消化器科)
共同演者 上田 真理(京都第二赤十字病院 消化器科), 平田 祐一(京都第二赤十字病院 消化器科), 和田 浩典(京都第二赤十字病院 消化器科), 碕山 直邦(京都第二赤十字病院 消化器科), 岡田 雄介(京都第二赤十字病院 消化器科), 真田 香澄(京都第二赤十字病院 消化器科), 鈴木 安曇(京都第二赤十字病院 消化器科), 中瀬 浩二朗(京都第二赤十字病院 消化器科), 萬代 晃一朗(京都第二赤十字病院 消化器科), 森川 宗一郎(京都第二赤十字病院 消化器科), 河村 卓二(京都第二赤十字病院 消化器科), 河端 秀明(京都第二赤十字病院 消化器科), 盛田 篤広(京都第二赤十字病院 消化器科), 宮田 正年(京都第二赤十字病院 消化器科), 西大路 賢一(京都第二赤十字病院 消化器科), 宇野 耕治(京都第二赤十字病院 消化器科), 田中 聖人(京都第二赤十字病院 消化器科), 安田 健治朗(京都第二赤十字病院 消化器科), 中島 正継(京都第二赤十字病院 消化器科), 桂 奏(同 病理部)
抄録 【症例】60歳代女性【主訴】腹痛【既往歴】平成19年より急性膵炎を繰り返していた。【現病歴】膵炎の原因検索を目的に前医で施行されたMRCPで膵管癒合不全が疑われ、精査加療を目的に当科へ紹介され入院した。【現症】腹部平坦、軟、自発痛・圧痛なし。【経過】入院時血液検査では血算、肝胆道系酵素、膵酵素、腫瘍マーカーに異常は認めなかった。ERCPで膵管癒合不全及び胆管合流型の膵・胆管合流異常と診断し、膵炎の原因と考え外科的治療を施行する方針となった。その後術前検査目的に施行した腹部造影CTで膵頭体移行部に長径23mm大の辺縁不整で境界不明瞭な造影効果の乏しい低吸収域及び膵周囲のリンパ節腫大を認めた。EUSで膵病変は辺縁に低エコー域を伴い内部は不均一でやや高エコーのSOLとして描出された。また、膵近傍に平坦な長径9.8mm大の腫大リンパ節を認めた。腹部MRIで膵病変は辺縁不整でやや境界不明瞭な腫瘤として描出され、T1WIで筋肉と同程度の低信号、T2WIで中間信号を示した。膵腫瘤については膵・胆管合流異常のために膵液細胞診は行えず、良悪性の鑑別のためFDG-PETを施行したが、膵腫瘤に強い集積(SUV=14.2)を認め悪性腫瘍が疑われた。経過中に腹部症状は認めず、一過性のCRP軽度上昇を認めるのみであった。抗核抗体、リウマトイド因子は陰性、IgG4は正常範囲であった。組織学的診断は行えず、臨床経過や画像所見から膵膿瘍や腫瘤形成性膵炎の可能性が考えられたものの、膵管癌の合併を否定できず膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では膵周囲に出血を伴う線維脂肪組織を認め、化膿性肉芽腫が散在しており、病変付近の膵実質辺縁に炎症細胞浸潤を伴う線維化を認めた。また、膵病変に隣接する十二指腸壁にも好中球浸潤を伴い部分的に膿瘍を形成していた。【考察】膵膿瘍の多くは急性膵炎後の合併症として膵の周囲に発生する。しかし明らかな膵炎の既往のない膵膿瘍の報告もあり、軽症膵炎であっても鑑別疾患として膵膿瘍を考慮すべきである。今回我々は膵管癌との鑑別に苦慮した膵膿瘍の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵膿瘍, 膵管癌