セッション情報 |
Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)
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タイトル |
鑑別診断に苦慮したcollagenous colitisの一例
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演者 |
上田 智大(医仁会武田総合病院) |
共同演者 |
松山 希一(医仁会武田総合病院), 島本 福太郎(医仁会武田総合病院), 柏 敦文(医仁会武田総合病院), 藤永 陽介(医仁会武田総合病院), 滝本 見吾(医仁会武田総合病院), 山内 宏哲(医仁会武田総合病院) |
抄録 |
症例は85歳男性.主訴は下痢,血便および腹痛.平成23年1月に狭心症で冠動脈ステント留置術施行され,アスピリン,クロピドグレル,アムロジピン,ジルチアゼム,ランソプラゾールなどを内服している既往がある.平成23年2月中旬より下痢や腹痛が出現し時に血便も生じていた.症状が徐々に増悪するため3月初旬に近医にて入院加療を行ったが改善せず,3月14日当院紹介受診後入院となった.来院時には腹部に軽度の圧痛があり,血液検査にて白血球数12100/μL,CRP 2.11mg/dlと軽度の炎症反応および腹部造影CTにてS状結腸の壁肥厚を認めた.下部消化管内視鏡検査ではS状結腸に多発する縦走潰瘍を認めた.感染性腸炎や虚血性腸炎,collagenous colitisを疑ったが,便培養検査では正常細菌叢,病理組織検査でも確定診断には至らなかった.絶食,整腸剤の内服を行い経過観察したところ症状は速やかに軽快し,第12病日に独歩退院された.しかし退院3日後に再度鮮血便および腹痛が生じ来院,血液検査にて軽度の炎症反応と腎不全を認め再入院となる.入院後の大腸内視鏡検査ではS状結腸に前回より深く幅の広い多発する縦走潰瘍を認めた.collagenous colitisを疑いアムロジピン,クロピドグレルを中止,ランソプラゾールはオメプラゾールに変更し,絶食,補液を行ったところ症状および腎機能異常の改善をみた.入院後第18病日の内視鏡検査で潰瘍は縮小し白苔は消失,再生上皮の出現を認め内視鏡的に改善と判断した.大腸病理組織では基底膜の肥厚を認め特殊染色にてcollagen bandであることが確認され,collagenous colitisと確定診断した.治療後の経過は良好で第22病日に独歩退院した.特徴的である慢性下痢ではなく腹痛,血便,発熱といった強い症状を伴い,内視鏡検査にて深い縦走潰瘍を呈したcollagenous colitisの一例を経験したので多少の文献的考察とともに報告する. |
索引用語 |
collagenous colitis, 虚血性腸炎 |