抄録 |
肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法施行後に腫瘍崩壊症候群を来した1例中村昌司 山田幸則 鈴木麻菜 末吉弘尚 吉井俊輔 吉岡鉄平 有本雄貴 大川雅照 平尾元宏 佐藤雅子 小森真人 吉原治正大阪労災病院 消化器内科症例はHBsAg陰性、HCV-Ab陰性でアルコール過量飲酒歴のない79歳男性。糖尿病で近医に受診しており、採血にて肝機能異常を指摘され当院に紹介された。当院受診時の血液検査でAST47U/L、ALT45U/L、T-Bil0.4mg/dL、Alb3.1g/dL、PT81.4%、ICG15%、腹水なし、脳症なしでChild‐Pugh分類6点でgradeAであった。USで肝両葉下面にまたがる径15cmの内部が不均一な巨大腫瘤を認めた。造影CTでは肝右葉前区域に早期濃染、wash-outを伴う腫瘤を認めた。肝後区域や肝S5にも同様の結節を認め、肝動脈化学塞栓術(TACE)施行目的で当科入院となった。肝動脈後区域枝にファルモルビシン50mg+リピオドール10ml+ジェルパート1mgを注入した。術後day2より尿量は低下した。day2の血液検査所見はAST1876U/L、ALT515U/L、LDH11200U/L、T.Bil1.6mg/dL、BUN43mg/dL、Cr2.3mg/dL、UA9.0mg/dL、K4.2mEq/L、Ca8.2mg/Dlであり39度の発熱を認めた。day2~day4まで乏尿状態が続き輸液負荷をした。day5より尿量の増加を認めたが、BUN、Crは上昇を続けた。血液検査はday7でAST45U/L、ALT39U/L、BUN110mg/dL、Cr7.9mg/dL、UA7.4mg/dL、K4.4mEq/L、Ca7.7mg/dL、P10.9mg/dLと、高尿酸血症、高リン血症、腎機能低下を認め腫瘍崩壊症候群による腎不全と診断し血液透析を施行して、day7、day8、day9、day12に血液透析施行し、day14には1700ml/日程度の尿量が確保できるようになり、透析の離脱となった。固形癌に関して腫瘍崩壊症候群は比較的少ないとされているが肝細胞癌に対するTACE後に腫瘍崩壊症候群を来した1例を経験したので文献的な考察を含め報告する。 |