セッション情報 ワークショップ1「上部消化器及び小腸出血における最近の動向」

タイトル

早期胃癌ESD後潰瘍に対する内視鏡的ドプラ超音波プローブによる後出血の予防:第2相試験

演者 太田 高志(大阪府立成人病センター 消化管内科)
共同演者 上堂 文也(大阪府立成人病センター 消化管内科), 竹内 洋司(大阪府立成人病センター 消化管内科)
抄録 【目的】早期胃癌ESDの偶発症として後出血がある。露出血管の凝固やPPI投与によりその頻度は減少しているが、それらの処置にも関わらず吐下血で緊急止血を要する例を経験する。中でも、ESD適応拡大病変[2cm<,UL(+)]は後出血の高危険群(後出血率 12.5%)である。内視鏡的ドプラ超音波プローブ(DOP-US)は先端の血流シグナルを音に変換し聴取する器械で、出血性胃潰瘍の再出血予測に対する有用性が示唆されており、ESD後出血の予防に応用可能かを検討した。【方法】ESD適応拡大病変78例に対してESD直後の潰瘍底を観察しながらDOP-USで探触し、内視鏡所見とDOP-US所見を記録した。陽性シグナル[DOP(+)]は深度1.5mmの拍動波と定義した。活動性出血とDOP(+)部位はシグナル陰性[DOP(-)]になるまでソフト凝固し、DOP(-)部位は無処置で経過観察した。ESD後のセカンドルックは行なわず、30日以内の後出血を評価した。後出血は吐下血またはHb 2g/dl以上の低下と定義した。【成績】滲出性出血を32ヶ所[うちDOP(+)12か所]認め、凝固止血を行った。露出血管を847ヶ所認め、うちDOP(+)の162ヶ所(19%)と探触中に活動性出血を認めた4ヶ所を凝固し、残りの699ヶ所は無処置で経過観察した。血餅付着を18ヶ所認めたが、全てDOP(-)のため、経過観察した。内視鏡所見のない74ヶ所にDOP(+)を認め、72ヶ所を凝固した。後出血は6例(7.7%)に認めた。1例は5cmの腫瘍の切除後、吐下血なくHbが2.4g/dl低下した症例であった。DOP(+)の露出血管からは凝固処置にもかかわらず3ヶ所(1.9%、3/162)から出血を認めた。DOP(-)の露出血管からは無処置に関わらず出血を認めなかった(0/699)。内視鏡所見のない2ヶ所からの後出血を予測できなかった。【結論】DOP-USはESD後潰瘍からの後出血を効果的に予測できる可能性がある。DOP(+)部位に対する後出血予防の方法を検討する必要がある。
索引用語 後出血, DOP-US