セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 化学療法先行により、腹水濾過濃縮再静注法による腹水コントロールが可能となった虫垂原発腹膜偽粘液腫の1例 |
演者 | 武田 康宏(日本バプテスト病院 消化器内科) |
共同演者 | 池田 一毅(日本バプテスト病院 消化器内科), 高垣 伸匡(日本バプテスト病院 消化器内科), 湊 友美子(日本バプテスト病院 消化器内科), 藤田 陽太(日本バプテスト病院 総合内科), 中田 裕久(日本バプテスト病院 消化器内科), 赤神 正俊(日本バプテスト病院 外科), 多田 正晴(日本バプテスト病院 外科), 木下 浩一(日本バプテスト病院 外科) |
抄録 | 今回、われわれは腹膜偽粘液腫による難治性腹水に対し、化学療法を先行させることにより、腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:CART)による腹水コントロールが可能となった1例を経験したので報告する。症例は75歳女性、ドック受診時に大量腹水を指摘され当科紹介受診となった。虫垂炎による虫垂切除の既往あり。初診時の腹部造影CT検査にて腹腔内に大量の腹水を認めた。腹水穿刺では16G針では容易に吸引出来ない非常に粘度の高い腹水を認めた。腹膜偽粘液腫・腹膜悪性中皮腫などによる腹水も念頭にいれ精査を行った。原発精査目的で腹部造影CT・骨盤MRI・経腟超音波検査を施行した。卵巣には明らかな腫瘍性病変は指摘できなかったが、腹部造影CTにて虫垂に一致する部位に粘液の貯留を認め、超音波内視鏡でも虫垂開口部に近接する嚢胞性病変を認めた。腹水細胞診では腫瘍の由来組織の確定が困難であったため、開腹下腫瘍生検を施行した。開腹下腫瘍生検の免疫染色ではCK7(-),CK20(+),MUC2(+),MUC5AC(+)であり、大腸由来の腫瘍細胞と考えられ、遺残虫垂原発腹膜偽粘液腫と診断した。腹膜切除は患者が希望されず、大腸癌に準じ化学療法(XELOX)を開始した。当初、腫瘍マーカーの改善および腹水の減少を認めたが、XELOX 3クール終了時より腹水の増加傾向を認めた。化学療法をIRISに変更したが、腹水のコントロールは困難であった。腹水性状を判別するため、IRIS2クール終了時に腹水穿刺を行ったところ腹水粘度が減少しており、腹水検査にて細胞数の著明な減少(6240→440/μl)を認めた。腹水コントロール目的で腹水濾過濃縮再静注法を試行したところ問題なく施行が可能であった。現在、腹水濾過濃縮再静注法施行下に化学療法を継続しており、腫瘍マーカーの減少(CEA10.0→4.8)を認めている。癌性腹水に対するCRATの有用性の報告は数多くなされているが、腹膜偽粘液腫に対しCARTを施行した報告は医中誌にはなく、文献検索を含め報告する。 |
索引用語 | 腹膜偽粘液腫, 腹水濾過濃縮再静注法 |