セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

当院における自己免疫性膵炎20例の検討

演者 後藤 規弘(西神戸医療センター 消化器科)
共同演者 荒木 理(西神戸医療センター 消化器科), 村上 坤太郎(西神戸医療センター 消化器科), 佐々木 綾香(西神戸医療センター 消化器科), 津田 朋広(西神戸医療センター 消化器科), 松森 友昭(西神戸医療センター 消化器科), 安達 神奈(西神戸医療センター 消化器科), 島田 友香里(西神戸医療センター 消化器科), 林 幹人(西神戸医療センター 消化器科), 井谷 智尚(西神戸医療センター 消化器科), 三村 純(西神戸医療センター 消化器科)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎(以下AIP)は1995年にYoshidaらにより提唱された疾患概念であり、2009年には診療ガイドラインも発表された。しかしながら、非典型例において膵癌との鑑別が困難である症例が存在する点、自然軽快する症例も認める点など検討すべき課題は多く残されている。当院において診断された自己免疫性膵炎の治療と経過について検討し報告する。【方法】1999年1月~2011年5月に当院おいて、自己免疫性膵炎臨床診断基準2006もしくは自己免疫性膵炎アジア診断基準を満たした20例(男16例、女4例、発症時年齢35~84歳(中央値66.5歳))を対象としてretrospectiveに検討を行った。【結果】病変部位はびまん性9例、限局性11例(うち2例は非連続性の多発病変)であった。膵外病変は大動脈周囲炎4例、唾液腺炎2例、硬化性胆管炎2例を認めた。脾静脈の完全閉塞を4例において認め、そのうち3例は胃弓隆部に静脈瘤を認めた。脾静脈の閉塞を認めた4例のうち、2例は治療後に脾静脈の再開通を認め、胃静脈瘤も消失したが、2例は治療後も脾静脈が閉塞したままであり、胃静脈瘤は軽快しなかった。治療前の血清IgG4が測定されていた18例のうち、12例はIgG4の上昇を認めたが、6例においては上昇を認めず(cut-off値135mg/dl)、そのうち4例は悪性疾患の除外をできるかぎり行った上で診断的治療を行った。治療方針としては経過観察4例(3例が自然軽快)、ステロイド投与15例、手術+ステロイド投与1例であった。ステロイドの投与を行った症例のうち、2例は治療後の病変の変化を認めなかった。治療後に膵病変の再発を認めた症例は2例あり、いずれも維持投与中止後に再燃していた。【結語】AIPは自然軽快する症例もあるため、無症状の体尾部のAIPに対して治療を行うべきかのコンセンサスは得られていないが、脾静脈の閉塞を認める症例には早期の治療が望ましいと思われた。また、IgG4の上昇を認めずステロイドへの反応性でのみ診断可能な症例についてのさらなる検討が必要である。
索引用語 自己免疫性膵炎, 胃静脈瘤