セッション情報 |
ワークショップ1「上部消化器及び小腸出血における最近の動向」
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タイトル |
非静脈瘤性上部消化管出血に対する緊急内視鏡的止血治療の変遷
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演者 |
碕山 直邦(京都第二赤十字病院 消化器科) |
共同演者 |
河村 卓二(京都第二赤十字病院 消化器科), 田中 聖人(京都第二赤十字病院 消化器科), 安田 健治朗(京都第二赤十字病院 消化器科) |
抄録 |
【目的】当院における非静脈瘤性上部消化管出血に対する緊急内視鏡的止血術の10年前と最近との止血成績を、患者背景の変化と合わせて検討する。【対象と方法】当科で緊急内視鏡的止血術を施行した1995年1月から2000年6月まで(前期群)の非静脈瘤性上部消化管出血例222例(男性181例、女性41例)と2006年1月から2010年12月まで(後期群)の307例(男性213例、女性94例)を対象とし、後向き検討を行った。平均年齢は前期群で61.0±15.9歳、後期群で67.4±14.1歳であった。尚、対象患者の全身状態は米国麻酔学会(ASA)の基準で記載した。【結果】止血方法の内訳は各々(前期群/後期群)で、クリップ法16例(7.2%)/116例(37.8%)、薬剤局注療法(HSE、エタノール、併用) 169例(76.1%)/66例(21.5%)、高周波凝固法10例(4.5%)/65例(21.2%)、その他併用療法27例(12.2%)/58例(18.9%)であった。酸分泌抑制剤として前期群では主にH2受容体拮抗薬が使用され、後期群ではプロトンポンプ阻害剤(PPI)が主に用いられる傾向にあった。また前期群と比較して後期群は平均年齢が高く、Physical statusが不良な患者が多かった(PS 1/2/3/4/5・(前期群)112人/62人/47人/1人/0人 (後期群)113人/130人/51人/12人/1人)。抗血小板剤や抗凝固剤の使用率は前期群と比べ後期群では有意に高率であった(12.6%/28.3%)。再出血率は前期群が9.6%、後期群では8.9%と有意差を認めなかったが、再出血までの期間は前期群では平均3.07日であったのに対して、後期群では平均6.03日と有意に延長していた。【考察】近年では高齢で全身状態が不良の患者が増え、抗血小板剤や抗凝固薬の使用頻度が増加しているのも関わらず、再出血率や最終止血率、死亡率に有意差を認めなかったことは、PPIが広く用いられるようになったこと、また止血法として新型クリップや高周波凝固止血法が開発されたことが寄与している可能性が考えられた。【結語】治療法の変化は認めるものの非静脈瘤性上部消化管出血に対する緊急内視鏡的止血術は有効であると考えられた。 |
索引用語 |
非静脈瘤性上部消化管出血, 緊急内視鏡治療 |