抄録 |
胃静脈瘤破裂症例は出血量も多く,また重篤な基礎疾患を有していることが多いため, 適切な止血治療を行いショック状態から早期に離脱し, 出血後肝不全に対する対応が重要である.しかしながら胃静脈瘤破裂に対する止血治療の選択については各施設でばらつきがあり, 決まった治療法が確立していないのが現状である. 当院における胃静脈瘤破裂症例の初期診療の現状を明らかにし, 胃静脈瘤に対する治療方針について検討する.【対象】2004年3月から2011年2月の7年間に上部消化管出血で当院を受診し内視鏡的に胃静脈瘤破裂と診断された109例【結果】出血部位はLg-cが64例,緊急止血はclip37例,EVL18例,シアノアクリル4例,EIS3例.止血術後1週間以内の再出血は0例,1週間以内の早期死亡は1例.Lg-cf/fが45例で緊急止血はシアノアクリル35例,clip6例,EVLは1例あったが再出血のため2日後にシアノアクリルを追加.止血術後1週間以内の再出血はEVL後の1例と膵尾部癌の1例.1週間以内の早期死亡は4例.【考察】胃静脈瘤破裂症例における緊急止血術の際, シアノアクリルの有用性は高く, 太い静脈瘤に対しては極めて有効である.一方細い静脈瘤に対してclip法は観察と同時に即座に良好な視野の元で止血術が実施可能で止血率も高く当院では好んで選択されている.EVLに関しては食道静脈瘤には有効であるが, 胃静脈瘤に際しては十分な視野が確保しにくく, またリングの脱落による再出血のリスクが高い.【結論】太い静脈瘤に対してはシアノアクリルが有効である.細い静脈瘤に対しclipは良好な視野の元に観察と同時に即座に止血処置が実施可能で止血効果も高い. |