セッション情報 一般演題

タイトル

特異な経過を辿った原発性胆汁性肝硬変合併腹膜炎の一剖検例

演者 岩崎 哲也(大阪大学医学部附属病院 消化器内科)
共同演者 藥師神 崇行(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 井上 拓也(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 植村 彰夫(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 西田 勉(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 木曽 真一(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 筒井 秀作(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 考藤 達哉(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学医学部附属病院 消化器内科)
抄録 肝硬変を基礎疾患に有する患者において易感染性がしばしば問題となり、時に致命的な経過を辿り得る。今回我々は原発性胆汁性肝硬変症例で、剖検の結果脾周囲膿瘍が起因となったと考えられる腹膜炎を経験したので報告する。【症例】50歳代女性、原発性胆汁性肝硬変(Child-Pugh 8点,classB)にて加療していた。2010年9月、食道静脈瘤に対し内視鏡的食道静脈瘤硬化療法及び結紮術を施行した。10月2日に車を運転中、右側方からバイクに衝突されたが無症状のため経過観察となった。10月4日より40℃の発熱及び左季肋部から側腹部にかけて疼痛が出現した。血液検査上、軽度の炎症所見(WBC 8270/μl,CRP 5.93mg/dl)を認めるのみであり、腹部エコーでも有意な所見は認めなかった。抗生剤(LVFX 500mg/日)を内服したが症状は改善せず、10月7日に入院となった。【入院後経過】入院時の腹部造影CTにて腹膜は全体的に軽度肥厚しており、肝表面にごく少量の腹水を認め、腹膜炎が疑われた。脾臓は腫大を認めるが損傷などなく、腸管穿孔や他の実質臓器損傷も明らかでなかった。腹膜炎に対して抗生剤投与(CTRX2g/日)を開始したが奏効せず、腹水は増加を認めた。腹水の性状は漏出性で多核球数は1000/μL以上であり、血液及び腹水培養は陰性であった。第7病日よりMEPM2g/日、第12病日よりIPM1.5g/日と抗生剤を変更したが効果はみられず、次第に肝腎機能の低下を認め、腹水の増加及び全身浮腫が著明となった。第20病日より肝性脳症からの意識レベル低下を認め、次第に尿量低下及び呼吸状態悪化をきたし、第22病日に永眠された。病理解剖の結果、脾周囲膿瘍を認めた。培養の結果、腸内常在菌のみ検出された。膿瘍周囲の線維化とヘモジデリン沈着も認め、急性の経過は否定的であった。脾破裂や周囲の腸管損傷などは認めなかった。【結語】特異な経過を辿った原発性胆汁性肝硬変合併腹膜炎を経験した。剖検の結果、腹膜炎の原因は脾周囲膿瘍と考えられた。肝硬変を基礎疾患に有していれば、画像上判然としないような微小な損傷でも致命的になり得ると考えられ、示唆に富む症例と考え報告する。
索引用語 原発性胆汁性肝硬変, 脾周囲膿瘍