セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 胃癌に対する化学療法中に発症したTrousseau症候群の1例 |
演者 | 前川 聡(大阪大学 消化器内科) |
共同演者 | 山田 拓哉(大阪大学 消化器内科), 西田 勉(大阪大学 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学 消化器内科), 植村 彰夫(大阪大学 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学 消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学 消化器内科), 渡部 健二(大阪大学 消化器内科), 飯島 英樹(大阪大学 消化器内科), 筒井 秀作(大阪大学 消化器内科), 木曽 真一(大阪大学 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科) |
抄録 | 症例は50代男性。うつ状態のため当院精神科通院中、平成23年3月上旬頃より心窩部痛および黒色便を認めたため、3月下旬当科紹介受診となった。血液検査にてHb 9.8 g/dlと貧血を認め、上部消化管内視鏡検査にて、前庭部小弯後壁に1/2周性の3型胃癌と前庭部前壁に12mm大の早期胃癌(0-IIa+IIc)を認めた。生検の結果は前庭部小弯後壁の病変がpoorly differentiated adenocarcinoma、前庭部小弯前壁の病変がwell differentiated adenocarcinoma、HER-2陰性であった。腹部造影CT検査、PET-CT検査にて多発肝転移および縦隔内および腹腔内、左右鎖骨上窩に多発リンパ節転移を認め、臨床病期IV期(cT3N3M1)と診断した。手術適応なしと判断し、化学療法としてTS-1/CDDP併用療法を開始した。開始後有害事象なく経過も、Day13の入浴後、突然の耳鳴り、めまい、構音障害、左上肢の脱力、左下肢運動失調が出現した。脳血管障害を疑い頭部MRIを施行したところ、椎骨脳底動脈領域を中心に左右小脳、左後頭葉に多発脳梗塞を認めた。血液検査ではFDP 2.82 μg/mlと軽度上昇を認めたが、心電図上不整脈など異常所見は認めず、心エコー、頚動脈エコーでも明らかな血栓や塞栓源は認めなかった。病歴および血液、画像検査所見よりTrousseau症候群と診断した。胃癌からの出血リスクを考慮しt-PA投与は行わず、補液、グリセオール、エダラボン、ヘパリンにての保存的加療を行うこととした。治療開始後梗塞巣の増大を認めず、脳梗塞発症4日後には神経学的所見も改善したため、脳梗塞発症後13日目に退院となった。その後、いったん休薬していたTS-1/CDDP併用療法を脳梗塞発症23日後より再開した。担癌状態では凝固系の異常を来たす事が知られており、本症例のように経過中に脳梗塞を発症した場合、化学療法が中断、延期となるだけでなく著しくQOLを損なうことも多い。胃癌に対する化学療法中に発症したTrousseau症候群の1例を経験したので、若干の文献的考察を含めて報告する。 |
索引用語 | 悪性腫瘍, 脳梗塞 |