セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

塩酸アミトリプチンが症状の軽減および再発予防に有効であった成人発症周期性嘔吐症の1例

演者 上田 栄寿(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科)
共同演者 目 知代(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 益岡 優(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 親泊 智英(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 佐野 ひろみ(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 半野 元(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 武田 修身(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 川村 実里(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 高柳 成徳(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 廣岡 知臣(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科), 廣岡 大司(社会医療法人生長会 府中病院 消化器内科)
抄録 【症例】47歳男性 【既往歴】1型糖尿病 【病歴】30歳時に特に誘因なく嘔吐が出現し、当院入院するものの嘔吐の原因が特定できなかった。他院に転院して精査するも、嘔吐の原因疾患は特定できず、症状改善までに8ヶ月間の入院を要した。自律神経失調症が疑われ、経過観察となっていた。その後も発作的な嘔吐が出現し、その度に入退院を繰り返していたが対症療法をなされるのみであった。2007年より嘔吐は数カ月に1度の頻度で起こり、入院を要するようになった。2009年10月の入院時に鑑別疾患として成人発症の周期性嘔吐症を疑い、発作期にADH、ACTH、カテコラミンを測定したところ、ACTH、ADH、ノルアドレナリン、ドパミンの各種ホルモンが異常高値を認めた。症状改善後の間欠期に再度ADH、ACTHを測定すると基準値内であることが確認された。これより成人発症周期性嘔吐症と診断し、発作予防として塩酸アミトリプチンの内服による治療を行った。その後は入院が必要となった嘔吐症状は1回出現したものの、症状は塩酸アミトリプチン内服以前よりも軽微であり、早期に改善を認めた。現在は18カ月間を無症状で経過している。【考察】周期性嘔吐症は小児疾患としては有名であるが、成人でも発症する例がまれにあり、鑑別疾患に上がることなく診断が苦慮される例が多い。原因不明の嘔吐を診療するにあたり、周期性嘔吐症を鑑別疾患として列挙することが重要である。また三環系抗うつ薬が成人発症周期性嘔吐症に有効であることは、これまでにも報告されているが、今回三環系抗うつ薬が症状再発の予防にもなり、かつ症状の重篤化を抑制する効果も得られた症例を経験したため、文献的考察を含めて報告する。
索引用語 周期性嘔吐症, 塩酸アミトリプチン