セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

特発性上腸間膜静脈・門脈血栓症による難治性食道胃静脈瘤の一例

演者 吉井 將哲(関西医科大学 消化器肝臓内科)
共同演者 田橋 賢也(関西医科大学 消化器肝臓内科), 福井 寿朗(関西医科大学 消化器肝臓内科), 諏訪 兼彦(関西医科大学 消化器肝臓内科), 津久田 諭(関西医科大学 消化器肝臓内科), 鈴木 亮(関西医科大学 消化器肝臓内科), 高橋 悠(関西医科大学 消化器肝臓内科), 若松 隆宏(関西医科大学 消化器肝臓内科), 森 茂生(関西医科大学 消化器肝臓内科), 松下 光伸(関西医科大学 消化器肝臓内科), 關 壽人(関西医科大学 消化器肝臓内科), 岡崎 和一(関西医科大学 消化器肝臓内科), 池宗 真美(奈良社会保険病院 消化器内科)
抄録 症例は62歳、女性。2009年6月、2週間持続する腰背部痛、食思不振を主訴に近医より当科紹介受診となった。腹部造影CTにて、血栓によると考えられる門脈の閉塞、小腸壁の浮腫状壁肥厚を認めたため当院に緊急入院となった。同日、腹部血管造影検査を施行し、上腸間膜静脈から門脈に及ぶ閉塞及び側副血管の拡張を認めた。凝固・線溶系の各種検査にても異常を認めず、血管炎を合併する基礎疾患も認められなかったため、特発性上腸管膜静脈・門脈血栓症と診断した。上腸間膜動脈に動注カテーテルを留置し、ウロキナーゼ48万単位/日に加え、へパリン25000単位/日点滴による血栓溶解・抗凝固療法を開始した。治療開始後5日で門脈周囲の側副血行路の発達と検査データ・症状の改善を認めたが、門脈血栓の縮小は認められなかったため、ワーファリン内服療法に変更して経過観察することになった。上部消化管内視鏡検査にて、2009年9月には食道静脈瘤はLiF1CbRC0であったが、1年後にはLmF3CbRC2・Lg-cfF2CbRC1と食道胃静脈瘤の増悪を認めた。本人と相談の上、予防治療として内視鏡的硬化療法(EIS)を施行したが、門脈本幹の血栓症により治療効果は不十分であり、噴門部にRCサインの残存を認めた。引き続き追加治療を考慮していたが、噴門部静脈瘤出血をきたしたため内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)にて緊急に止血処置を行った後、待期的にEIS、EVLによる追加治療を施行した。2011年4月の内視鏡所見では、食道・胃静脈瘤は著明に縮小傾向が認められたものの、腹部造影CTでは下部食道壁から噴門部胃壁にかけて血流の残存が認められ、引き続き厳重に経過観察中である。今回、特発性上腸間膜静脈・門脈血栓症による難治性食道胃静脈瘤の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 食道静脈瘤, 門脈血栓