セッション情報 ワークショップ1「上部消化器及び小腸出血における最近の動向」

タイトル

門脈圧亢進症における上部消化管出血症例の検討

演者 鈴木 亮(関西医科大学 消化器肝臓内科)
共同演者 田橋 賢也(関西医科大学 消化器肝臓内科), 岡崎 和一(関西医科大学 消化器肝臓内科)
抄録 【目的】門脈圧亢進症患者においては、食道・胃静脈瘤のみならず肝硬変に合併した胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)なども消化管出血の原因となりうる。食道・胃静脈瘤出血はしばしば肝予備能良好例においても認められる場合があり、また、GAVEは肝硬変や腎・心疾患などの基礎疾患を有することが多いが、それらの背景因子は明らかでない。今回我々は、門脈圧亢進症における上部消化管出血症例の背景因子について検討した。【対象】当院において、2006年1月から2010年12月までに上部消化管出血を認めた門脈圧亢進症症例(潰瘍出血を除く)138例の背景因子について検討した。【結果】食道静脈瘤出血例の基礎疾患はC型肝硬変41例(Child-Pugh A 4例、B 22例、C 15例)、B型肝硬変12例(A 1例、B 5例、C 6例)、アルコール性肝硬変32例(A 10例、B 13例、C 9例)、PBC 6例(A 6例)、その他21例であり、PBCは肝予備能良好例において出血が認められた。胃静脈瘤出血例の基礎疾患はC型肝硬変1例(A 1例)、B型肝硬変1例(C 1例)、アルコール性肝硬変5例(A 2例、B 3例)、その他3例であり、半数がアルコール性肝硬変であった。GAVE出血例のうち肝硬変を基礎疾患とする症例は20例(A 5例、B 9例、C 6例)であった。肝硬変を基礎疾患とする症例においては肝予備能不良例で出血が認められたが、複数の基礎疾患併存例においてはChild-Pugh Aの症例でも出血が認められた。一方、PBCにおいて3例中2例は他疾患が併存していないChild-Pugh Aの症例であった。【結語】門脈圧亢進症における上部消化管出血症例に対しては、内視鏡所見や肝予備能のみならず、原因となる基礎疾患にも配慮して治療方針を検討する必要があると考えられる。
索引用語 食道胃静脈瘤, GAVE