セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

保存的治療で軽快した外傷性肝損傷の1例

演者 秦 康倫(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科)
共同演者 豊澤 昌子(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 木下 大輔(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 奥田 英之(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 茂山 朋広(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 宮部 欽生(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 岸谷 譲(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 川崎 俊彦(近畿大学医学部奈良病院 消化器・内分泌内科), 工藤 正俊(近畿大学医学部附属病院 消化器内科)
抄録 【症例】74歳男性。【既往歴】高血圧、緑内障。【主訴】右側腹部痛、発熱。【現病歴】2010年11月2日に自宅にて2mの高さより転落し、右側腹部を強打した。右側腹部痛が持続し、11月9日より39度台の発熱も認めたため、近医を受診したところ、肝・胆道系酵素、白血球の上昇を認めた。精査加療目的で11月12日に当科紹介受診され、肝膿瘍疑いの診断で同日即入院となった。【入院後経過】入院時血液検査でT-BIL1.0mg/dl、AST31U/L、ALT62U/L、LDH260U/L、ALP617U/L、γ-GTP164U/L、CRP16.8mg/dl、WBC10600/μl。超音波検査で肝右葉前区域に10cm大の辺縁不整、境界明瞭な液性部分の多い病変を認めた。超音波ガイド下で液性部分を穿刺し、ピッグテイルカテーテルを留置した。80mlほど排液後に、腔はほぼ消失したが、造影すると広範囲に造影剤が広がり肝破裂を疑った。排液の内容は感染胆汁が主であった。以上のことから、外傷性肝損傷(Ib型)に伴う胆汁嚢胞と診断した。ドレーンからの排液は徐々に減少したため入院第15日目にはドレーン抜去し、第19日目より食事開始とした。その後も腹部症状・発熱など認めず、また血液検査も改善したため、第29日目に退院となった。【考察】鈍的腹部外傷の中では、肝損傷が最も高頻度に見られる。日本外傷学会は、損傷形態により、I型:被膜下損傷(a:被膜下血腫、b:実質内血腫)、II型:表在性損傷(深さ3cm以内)III型:深在性損傷(深さ3cm以上、a:単純深在性損傷、b:複雑深在損傷)に分類している。本症例は巨大Ib型に分類されると思われる。巨大Ib型損傷やIIIb型損傷では肝内胆管損傷を合併して、胆汁腫や胆汁性腹膜炎をきたすことがある。多くは保存的にコントロールできない大量出血であり開腹手術の適応となるが、循環動態が安定している症例に関しては保存的加療が可能であることが知られている。今回、外傷性肝損傷に伴う遅発性の胆汁嚢胞が保存的加療にて軽快した症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 外傷性肝損傷, 保存的治療