セッション情報 一般演題

タイトル

多発性肝腫瘍を契機に診断された膵内分泌腫瘍の一例

演者 宮野 正人(大阪市立十三市民病院)
共同演者 倉井 修(大阪市立十三市民病院), 大庭 宏子(大阪市立十三市民病院), 上田 渉(大阪市立十三市民病院), 青木 哲哉(大阪市立十三市民病院), 岡 博子(大阪市立十三市民病院), 大川 清孝(大阪市立十三市民病院)
抄録 症例は56歳男性.H22年11月頃より倦怠感,微熱が出現し改善しないため当科受診.腹部CTにて肝両葉に多発する大小不同の腫瘍を認めたため精査加療目的で入院となった.転移性肝腫瘍を疑い,上,下部消化管内視鏡検査,胸部CT,Gaシンチを施行したが転移を来たすような病変は認めなかった.腹部エコーでは肝腫瘍の大部分は低エコーから嚢胞様の腫瘤として描出され,内部に高エコー部分を伴うものも一部に認められた.腹部MRIでは肝腫瘍はT1,T2強調画像で低~高信号が混在し,またair-fluid-levelも形成しており,腫瘍内部に出血を認めるものや充実性主体のもの,嚢胞性主体のものが混在した多彩な腫瘍であった.また膵体部から尾部にかけては腫大しており,腫瘍性病変が示唆された.膵腫瘍の精査として内視鏡的逆行性膵管造影を施行したところ,膵管は体部にて途絶の所見を認め,膵液細胞診ではクラス3bであった.確定診断のため肝腫瘍に対し経皮的肝生検を施行.組織結果はNSE陽性,choromogaranin A,Synaptpysin陽性であり神経内分泌腫瘍の診断であった.血中膵内分泌ホルモンは正常値であり,以上から非機能性膵内分泌腫瘍,多発性肝転移と診断した.治療としてまず肝動脈塞栓術を考慮し,腹部血管造影を施行したがvascularityは低く,CDDP+5-FU 動注のみで終了した.予後規定因子は肝腫瘍と考えられたため,肝動注療法を選択し,平成23年1月にリザーバー留置術を施行した.患者のQOLを考慮し,レジメンはlow-dose FPを隔週投与することに決定し退院となった.現在,外来にて化学療法継続中であるが肝腫瘍の増悪は認めていない.膵内分泌腫瘍は臨床的にも比較的めずらしく,本症例のように多発性肝転移を来し外科的切除不能である場合,現段階でエビデンスのある治療方法はない.今回我々は肝動注による化学療法を試みた一例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する.
索引用語 膵内分泌腫瘍, 転移性肝腫瘍