抄録 |
【現病歴】患者は70歳代、男性で大酒家であった。H23年1月初旬より全身倦怠感が持続し、発熱も伴ったため3月下旬に近医を受診した。血液検査にて炎症反応および肝胆道系の酵素の上昇を認めたため当科紹介となった。腹部造影CTにて肝S8にring enhanceを伴う径50mm大の多房性のlow density SOLを認めた。また、胸部造影CTにて両肺に多発する径5~10mmのring enhanceを伴う結節影を指摘された。多発性肺膿瘍を合併した肝膿瘍が疑われ入院となった。【経過】CT、MRCPでは胆道系に明らかな病変を認めず、血清アメーバ―抗体は陰性であった。SBT / CPZ2g/日を投与したが、血液データの改善が乏しかったため、第5病日に経皮径肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行。肝S8にある多房性の膿瘍に、7Fr.pig tail typeドレナージチューブを留置した。入院時の末梢血血液培養および膿瘍培養からC群連鎖球菌が検出され、これはSBT / CPZに対して感受性を有していた。しかし、第5病日に採取した血液培養でも同様の菌が検出され、SBT / CPZの血中濃度が有効値に達していないと考えられた。心エコー、経食道心エコーにて明らかな疣贅は認めなかったが、臨床および治療経過より、感染性心内膜炎に準じて治療を行うこととなった。薬剤感受性試験の結果を踏まえて、ペニシリンG2400万単位/日x28日間を投与した。その後、解熱とともに炎症反応は改善し、CT上も多発性肺膿瘍、肝膿瘍ともに寛解状態となったため、一旦退院の上現在は外来で経過観察中である。【考察】Compromised hostで見られる肝膿瘍は非常に予後が悪く外科的治療も含め難渋することが多いが、本症例はドレナージ及び抗生剤の大量投与による保存的治療で良好な経過をたどり、興味深い一例と考えられたため報告する。 |